醸造所のタップルームで隣の27歳と乾杯した夜
今回はクラフトビールの話。醸造所併設のタップルームで、何頼むか迷ってたら隣の27歳・カンナに「それより今日はこっち」って横から助言された。銘柄を相談しながら飲む立ち飲みで一人客同士が自然に喋る箱の空気を、ブルワーのうんちくと飲み比べ込みでアキが実況する体験談。
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今回はクラフトビールの話。醸造所がそのまま併設してる、いわゆるタップルームってやつ。出会いの場として語られることはまずないけど、俺の中では相席屋やバーより全然喋りやすい箱の一つだわ。
理由は単純で、ここは「次どれ飲む?」が全員の共通言語だから。相席屋みたいにシステムで席を合わせるでもなく、スナックみたいにママが繋ぐでもなく、ただカウンターで銘柄に迷ってると、隣の客が普通に横から口を出してくる。今日はそのパターンで、隣にいた27歳・カンナって人と乾杯して、最終的にちゃんといい雰囲気まで行った夜の話。先に言っとくと、最初の一杯で俺は完全に銘柄選びをミスってる。その情けないとこから書く。
醸造所のタップルームっていう箱

クラフトビールの出会いの入口、現場での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。
その日は仕事終わりに、前から行ってみたかった醸造所のタップルームに一人で行った。ビルの一階、ガラス張りで、奥にデカいステンレスのタンクがずらっと並んでる。あれが仕込んでるやつね。手前がカウンターで、立ち飲みと、ハイテーブルがいくつか。椅子はあるけど、半分くらいの客は立って飲んでる。
入った瞬間に分かるんだけど、空気がめちゃくちゃ軽い。バーみたいに静かで気取った感じもないし、相席屋みたいに「さあ出会いですよ」っていう変なテンションもない。みんなビール片手にだらっと喋ってて、一人で来てる客も普通に多い。一人で来て浮かないってのは、こういう箱の一番いいとこだわ。
注文はキャッシュオン、つまり一杯ごとにその場で払う方式だった。最初にグラスのサイズだけ選ぶ。レギュラーとハーフがあって、ハーフだといろんな銘柄を少しずつ試せる。だから常連はだいたいハーフで何種類も飲み回してる。一杯ずつ完結するから、合わない味を引いても次でリカバリーできるし、長居してもダラダラ高くつかない。この「気軽にチェンジできる」感じが、店全体のゆるい空気を作ってるんだと思う。
俺はその仕組みを知らずに、いきなりレギュラーサイズを頼んだ。後で気付くけど、初見でデカいグラスのIPAを引くのは一番やっちゃいけないやつだった。笑

カウンターに10種類くらいタップが並んでて、黒板に「IPA」「ペールエール」「ヴァイツェン」とか書いてある。正直、半分も意味分かってなかった。笑

アキさんでも分かんないのあるんすね。意外。

ビールはな、雰囲気で飲んでた。笑 とりあえず一番上に書いてあったIPAってやつ頼んだら、これがめちゃくちゃ苦くて。
タップルームの良さは、ビールの「種類で選ぶ」って文化が最初からあること。普通の居酒屋なら「とりあえず生」で終わる会話が、ここだと「何が飲めるんですか」「今日のおすすめは」って自然に転がる。注文カウンターで店員と銘柄の話をしてると、隣で迷ってる客がいたら、その輪に勝手に巻き込まれる。出会いを狙って喋りに行くんじゃなくて、ビールの話をしてたら横の人と喋ってた、になる。これがデカい。
最初の一杯で銘柄をミスった俺

で、その「銘柄ミス」の話。さっきのIPA、俺、苦いのが結構来るタイプだったみたいで、一口飲んで思わず「うわ、苦」って声が出た。本当はもっとフルーティーで飲みやすいやつを想像してたのに、完全に名前のイメージだけで選んでた。情けな。笑
そのリアクションを、隣でグラス持って立ってた女性に見られてた。それがカンナ。後で27歳って分かるけど、その時点では「一人で慣れた感じで飲んでる綺麗な人がいるな」くらい。そのカンナが、俺の「うわ、苦」を見て普通に吹き出した。
ふふ、それ一番苦いやつ(笑)初見で頼むと大体そうなる。


え、まじですか。名前かっこいいから頼んだだけなんですけど。笑
名前で選ぶの一番危ないやつ(笑)苦いの苦手なら、次そっちのヴァイツェン頼みなよ。バナナみたいな匂いするから。


ビールでバナナ?意味分からん。笑 でも飲んでみます。
これがタップルームのいいとこなんよ。普通のバーで知らん人にいきなり「それより次こっち飲みなよ」って言われたらちょっと身構えるけど、ここだと全然不自然じゃない。ビールの種類が多すぎて、初見はみんな迷う。だから詳しい客が横から助け舟出すのが、もう店の文化として成立してる。カンナはこの店の常連で、ビールの種類にやたら詳しかった。
言われた通りヴァイツェンってやつを頼んだら、本当にほのかにバナナみたいな甘い香りがして、苦さも全然なくて飲みやすかった。「うっま」って素で言ったら、カンナがまた笑った。
ビールの種類が共通言語になる

そこから自然にカンナと並んで飲む流れになった。っていうか、銘柄の話が一回始まると、もう会話が途切れない。「これは何が違うの」「これは麦の感じが強い」「こっちは柑橘っぽい」って、目の前のビールについて喋ってるだけで、勝手に時間が過ぎる。
相席屋だと「お仕事は?」「休みの日なにしてるんですか?」っていう、出会い専用の質問を延々やらなきゃいけない。あれが俺は結構しんどい。質問が尽きた瞬間の沈黙が、まじで気まずい。でもタップルームは、目の前のグラスがずっと話題を供給してくれる。「次どれ飲む?」って聞くだけで会話が継続する。目の前のグラスがある限りネタが尽きないから、お互いの探り合いみたいな間が発生しない。沈黙が来たら「もう一杯いきます?」で全部繋がる。
しかも、好みを言い合うだけで自然とお互いのことが分かってくる。「苦いの好き」「酸っぱいの好き」「重いの飲みたい気分」って、味の好みって意外とその人の素が出る。出会い専用の質問をしなくても、ビールの話をしてるだけで、相手がどういう人か何となく見えてくる。これが俺は一番いいと思ってて、構えずに距離が縮む。
カンナは飲み比べセットを頼んでて、小さいグラスが三つ並んでた。「一個ずつ味違うから、飲んでみ」って一個こっちに寄こしてくれて、それ飲んで「全然違う」「でしょ?」みたいなやり取りで、もう完全に打ち解けてた。
この左のやつ、私一番好き。ちょっと酸っぱいの分かる?


あー、確かに酸っぱい。ビールでこの味になるの不思議。詳しいっすね、めっちゃ。
食品メーカーで企画やってて。職業病で、味の違いつい気になっちゃう(笑)


あー納得。さっきから利き酒師みたいだもん。
利き酒師(笑)ただの酒好きだって。

カンナは詳しいんだけど、うんちくをガーッと喋るタイプじゃなかった。「これはこういう製法でね」みたいな講義はしてこない。「これ酸っぱくて好き」「これは私はちょっと苦手」って、好き嫌いベースで楽しんでる感じ。詳しいのに偉そうじゃない人って、一緒に飲んでて単純に楽しい。あと、よく笑う。俺がどうでもいいこと言っても声出して笑うから、こっちもどんどん喋っちゃう。笑い上戸って正義だわ。
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飲み箱はそれぞれ性格が違う

ここでちょっと整理しとくと、同じ「飲む系の出会い」でも箱ごとに性格が全然違う。俺はどれもそれなりに通ってきたけど、人と喋るきっかけの作られ方がまるで別物。迷ってる人のために、ざっくり並べとく。あくまで俺の体感ね。
| 箱の種類 | 喋るきっかけ・空気(アキの体感) |
|---|---|
| 相席屋・ラウンジ | システムで席を合わせる。出会い前提で話が早いが、最初の質問攻めが少しダルい |
| スナック | ママが客同士を橋渡し。馴染むまで時間がいる。当たり店だと一気に縮む |
| 英国パブ・スポーツバー | 試合や音楽が共通の話題。盛り上がるが、観戦に夢中だと会話に入りづらい時も |
| タップルーム・醸造所 | 「次どれ飲む?」が共通言語。一人客同士が銘柄相談で自然に喋る。立ち飲みで距離も近い |
| 角打ち・立ち飲み | 距離が物理的に近く回転も速い。常連と一見が混ざる雑多な空気で話しかけやすい |
タップルームが俺の中で評価高いのは、「銘柄を相談する」という建前が最初から用意されてるからだわ。立ち飲み主体だから物理的な距離も近いし、ビールが進めば自然と声もデカくなる。声かけが苦手な人ほど、こういう「会話の口実が箱に埋め込まれてる」場所が向いてる。自分から気の利いたこと言わなくても、目の前のタップが話題を出してくれる。
ちなみに同じ立ち飲みでも、純粋にサッと飲んで距離が近い角打ち立ち飲みの出会いはまた別の良さがある。形態ごとの違いをもっと細かく比べた相席全形態の比較も別の夜に書いてるんで、自分に合う箱を探してる人はそっちも見てくれ。
ブルワーが出てきて飲み比べが加速した

カンナと二人で飲んでたら、奥のタンクの方から作業着のスタッフが出てきた。聞いたらこの店のブルワー、つまり作ってる本人だった。カンナは顔見知りらしくて、「今日の新しいの出た?」って気軽に聞いてた。

今日からの限定、まだ黒板に書いてないんですよ。柚子入れたやつ。試します?
飲む飲む。柚子のやつ絶対好きなやつじゃん。


俺も俺も。さっきIPAで火傷したんで、優しいの希望で。笑

IPAいきなりは攻めますね(笑)これは飲みやすいんで大丈夫っすよ。
その柚子のやつ、本当に爽やかでうまかった。ブルワーが「これは仕込みでこういう狙いで」って一言二言だけ説明してくれて、それを聞きながら飲むと味の感じ方が変わる。同じビールでも、誰がどういう気持ちで作ったか聞いてから飲むと、ちょっと特別に感じる。カンナと「これ好き」「分かる」って言い合ってるうちに、ブルワーも交えて三人でしばらく飲み比べしてた。

作ってる人と喋れるの、めっちゃ良くないすか。俺もそういう店行ってみたいっす。

いいぞ。出会い抜きでも普通に楽しいから、まず一人で飲みに行ってみ。苦いの引いても俺は責任取らんけど。笑
醸造所のタップルームって、作ってる人と客の距離が近いのもいいんよ。出来たてが飲めるし、その場で「これどう?」って聞ける。その輪に一緒に混ぜてもらえると、隣の客と「同じ体験をしてる感」が一気に強まる。出会いとか抜きに、単純に楽しい時間だった。気付いたらカンナと、最初に会った時とは別人みたいに砕けて喋ってた。

さっき会ったばっかなのに、めっちゃ喋ってるな俺ら。
ビールのせいでしょ(笑)あと、あんたリアクションでかいから。


リアクションでかいは否定できん。笑
三杯目あたりで、もう一軒の流れに

飲み比べも一周して、三杯目あたり。店内はそこそこ混んできて、立ち飲みのスペースもだいぶ詰まってきた。仕事帰りの集団が入ってきて、ガヤガヤしだした。カンナのグラスも空きかけてて、二人とも「いい感じに回ってきたな」くらいのほろ酔い。ハーフサイズで何種類も飲んだから、酔いの回り方もゆるくて、変にベロベロにならないのもこの店のいいとこだった。
カンナが「ここ、混んでくると声張んなきゃで疲れるんだよね」って言って、ちょっと外の空気吸おうかって流れになった。店出て、ビルの前の歩道で夜風に当たってたら、店の中のガヤから離れて急に静かになって、空気がちょっと変わった。
ふー、涼しい。…なんか、一人で飲みに来たのに、めっちゃ喋っちゃった。


俺もです。最初の苦いビールが全部繋いでくれた。笑
あの「うわ、苦」、今日一の名シーンだったわ(笑)


掘り返すのやめて。笑 …もう一杯だけ、静かなとこで飲み直しません?さっきの柚子の余韻でなんか飲みたい。
うーん(笑)一杯だけね。私、明日そんな早くないし。

ここから先は、いつも通り書かない。近くの落ち着いたビールバーで一杯だけ飲み直して、立ち飲みの賑やかさから二人で座る静けさに変わったあたりで、自然といい雰囲気になった。俺の所作だけ一つ言っとくと、こういう時に相手が乗ってこないなら俺は無理に引っ張らない。カンナが「一杯だけね」って自分で言って、自分から付いてきた。だから次に進んだ。それだけ。
その後。カンナからの「これ飲んだ?」

翌日の夕方、カンナからLINEが来た。クラフトビールの缶の写真と一緒に「これ飲んだ?スーパーで見つけた、昨日の柚子のと系統似てる」って。完全にビール仲間のテンションで笑った。俺が「飲んでないけど、それ俺が飲むと絶対また苦いやつ引くやつだ」って返したら、「そこは私が選ぶから大丈夫(笑)」って即レスが来た。
それから何回か、あのタップルームで待ち合わせて飲んでる。カンナは相変わらず詳しくて、毎回「今日はこれから飲も」って俺の一杯目を勝手に決めてくる。おかげで二度と苦いやつで火傷してない。笑 ブルワーも俺らを覚えてくれてて、新作出ると「あの二人に試させよ」って奥から出てくる。あの店で、初見の「うわ、苦」から始まった相手と、こうやって缶ビールの写真送り合う仲になってるのが、普通に嬉しい。
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正直に言うと、タップルームも当たり外れはある。行く曜日と客層次第で、隣がカップルと常連のおっさんしかいない日もあるし、誰とも喋らず一人で三杯飲んで帰る夜も普通にある。カンナと会えたのも、たまたま隣で銘柄に迷ってた俺を笑ってくれた運の良い日だった。
だから俺は、こういう箱だけに頼らず、アプリも並行で普通に回してる。タップルームでうまいビール飲めるだけでその日は元は取れてるし、そこに会えたらラッキーくらいの気持ちで通える。会える数の保険があると、一人飲みの箱に気負わずふらっと入れるから、結果的にこういう「うわ、苦」みたいな出会いも拾える。
そういえば、間に店の人が入って距離が縮む系だと、スナックでママに繋がれて意気投合した夜の話も別で書いてる。あれはママ、こっちはブルワーと、橋渡し役が違うだけで縮み方は似てた。けど俺は、自分で一杯目を選べるようになった今でも、カンナに「今日はこれ」って決めてもらうあの時間が、しばらくはまた楽しみで通うと思う。
会った後の流れまで、次に読む。
アプリで会ったあとに失速しないように、連絡、待ち合わせ、次のデートへ繋がる記事を置いています。


