酔いつぶれた子を介抱して、何もせず送り届けた夜の話。
相席屋でたまたま隣になったアカネ(24)が、飲みすぎて完全に潰れた。連れもいない、放っておけない。水飲ませて、タクシー乗せて、家の前まで送って、何もせず帰った夜の話。下心が一瞬よぎって、即打ち消した。武勇伝じゃない。ただ、これだけは譲れない一線がある、って話を供養します。
(飲みで潰れた子)PLACE現場
現場レポHOOK現場感を
そのまま読む
ナンパの話をこれだけ書いてると、たぶん「アキって、隙あらばお持ち帰り狙ってる男」みたいに思われてる気がする。まあ、半分は否定しない。笑
ただ今日は、お持ち帰りの話じゃない。むしろ逆。何もせずに帰った夜の話。たまたま隣になったアカネっていう24の子が、目の前で完全に潰れて、放っておけなくて、介抱して、家の前まで送って、そのまま帰った。それだけの話。色っぽい展開は一個もない。
でも、これだけは書いときたかった。どんなに軽いノリでナンパしてても、ここだけは絶対に越えない、っていう一線が俺にもある。その話を、ちょっとカッコつけすぎない程度に、供養させてくれ。
相席屋で隣になったアカネ。最初は普通に飲んでた
一線の入口、現場での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。
その日は、相席屋。一人で行って、適当に相席ついて、っていういつもの感じだった。向かいに座った二人組のうちの一人が、アカネだった。もう一人は、たしかミキって名前だったと思う。すまん、こっちはうろ覚え。笑
アカネは最初、ぜんぜん普通だった。むしろ二人の中ではしっかりしてる側。「私が頼んどくね」みたいな感じで、ドリンクのオーダー仕切ったり、ミキにメニュー見せたり。仕事の話を振ったら「営業っぽいことしてる」って、サバサバ答える感じの子で。声かけ慣れしてるこっちからしても、変に構えてなくて話しやすかった。

アカネさん、飲むの好きそう。ペース速いね。
あー、今日ちょっと嫌なことあって(笑)飲も飲も


お、それは飲むやつだ。何があったか聞こうか?
いいの、いいの。聞かないで(笑)

今思えば、この「嫌なことあった」が伏線だったんだよな。仕事で何かあったらしくて、ヤケ酒気味だった。最初は気づかなかったけど、アカネのグラスが空くスピードが、明らかに普通じゃなかった。レモンサワー、ハイボール、で、また何か濃いやつ。隣のミキが「アカネ、ちょっとペース速くない?」って言っても、「だいじょぶだいじょぶ」って笑って流してた。
俺はその時点では、まだ完全にナンパ脳だった。正直に言うと、アカネ感じいいし、ミキも可愛いし、「この二人とどう転がそうかな」くらいのことは考えてた。下心ゼロですって言ったら嘘になる。相席屋に一人で来てる時点で、そりゃ何かしらは期待してる。

アキさん、その時点ではまだ狙ってたんすよね

狙ってた狙ってた。笑 その日はそういうつもりで来てたからな。でもこのあと、その空気が一瞬で吹っ飛ぶんだわ。
急に黙る、呂律が回らない。アカネが潰れた
空気が変わったのは、わりと急だった。
さっきまでケラケラ笑ってたアカネが、ある瞬間からスッと静かになった。喋らなくなって、テーブルに肘ついて、目がとろんとしてる。「アカネ、大丈夫?」ってミキが顔覗き込んでも、返事が一拍遅れる。で、出てくる言葉の呂律が、もう怪しい。
んー…だいじょぶ…だいじょぶだって…


アカネさん、ちょっと水飲も。これ、お冷や。
…みず? あー…ありがと…ありがと…

「ありがと」を二回言った。さっきまでのキレのある喋り方じゃない。完全にスイッチが切れた感じ。お冷やを渡したら、半分こぼしながら飲んでた。手元がもう、おぼつかない。
ここで俺の頭の中の、ナンパ脳のスイッチが、カチッと切れた。これは口説くとか口説かないとか、そういうフェーズじゃない。普通にやばいやつだ。酒が一気に回って、急性なんちゃらの手前みたいな潰れ方。場数だけはあるから、これがシャレにならんラインだってのは、見りゃ分かる。

え、そんな急に来るもんなんすか

来るんだよ。特にヤケ酒で短時間に強いの入れると、一気にガクッといく。さっきまで喋ってたのに、急に糸が切れたみたいになる。
困ったのは、隣のミキだった。ミキはミキで、けっこう飲んでて、自分のことで手一杯っぽい。アカネを介抱できる状態じゃなかった。しかもこのあと、もっと困ったことになる。
連れのミキが、まさかの「お先に」。詰んだ
アカネがぐったりしてきたところで、ミキのスマホが鳴った。電話に出て、なんか慌てた様子で席を立つ。戻ってきて、申し訳なさそうに言った。

どうしたの、なんかあった?
彼氏が今から駅まで来てるみたいで…私、行かなきゃで。でもアカネこんなだし、どうしよ…


あー…まあ、彼氏来ちゃってんなら、しょうがないよな。
正直、おいおい、って思った。笑 潰れた友達を、初対面の男(=俺)がいる席に置いて、彼氏のとこ行くんかい、と。でもまあ、ミキも酔ってて判断力鈍ってたんだろうし、責める気にもなれなかった。とにかく、アカネをどうにかしなきゃいけない状況だけが、目の前に残った。
ミキはアカネの肩を揺すって「アカネ、私もう行くね、大丈夫?」って声かけてたけど、アカネは「ん…いいよ…いってらっしゃい…」みたいな、ふわふわした返事しかできない。住所とか連絡先とか、しっかり聞けるコンディションじゃない。結局ミキは、アカネのスマホのロック画面だけ俺に見せて、「これ、アカネの…たぶん家、この辺だと思う」みたいな、めちゃくちゃ曖昧な情報だけ残して、バタバタ帰っていった。

うわぁ…それ完全に詰みじゃないすか。潰れた子と、アキさん二人きり

詰みだよ。笑 潰れた女の子と、初対面の俺。これ、状況だけ切り取ったら、めちゃくちゃ危ないやつだろ。
そう。状況だけ見たら、最悪なやつだ。意識がもうろうとしてる女の子と、初対面の男が、二人きり。世の中で一番やっちゃいけない事故が起きる、その入り口みたいなシチュエーション。
で、白状すると。ほんの一瞬だけ、頭の隅を、邪な考えがよぎった。これ、このまま…みたいな。
…って、書いてて自分でも最低だなと思う。でも、人間だから、一瞬よぎることまでは止められなかった。問題は、その後だ。
一瞬よぎった下心を、即、自分で叩き潰した
その一瞬の考えを、俺は、自分で即座に打ち消した。
いや、無理。これは無理。論外だろ、と。

(心の声)…いや、何考えてんだ俺。こんなの、人として終わってるだろ。
ハッキリ書いとく。意識がもうろうとしてる相手、自分で判断できない状態の子に、何かするのは、ナンパとかそういう次元の話じゃない。ただの、最低の犯罪者だ。ナンパ師がどうとか、口説きのテクがどうとか、そんなレベルの話じゃ一切ない。人として、絶対にやっちゃいけないやつ。
俺がこれまで書いてきたお持ち帰りの話は、全部、相手がシラフで、ちゃんと「いいよ」って自分の意思で選んでくれたから成立してる。お互いが了解してて、初めて成立する。酔って潰れて、イエスもノーも言えない子に手を出すのは、それとは似ても似つかない、まったくの別物だ。一緒にしたら、これまで会ってくれた子たち全員に失礼だ。

アキさんでも、一瞬は…よぎるんすね

よぎるよ。俺は聖人じゃない。でもな、よぎった後に「いや無理だろ」って即潰せるかどうかが、人としての分かれ目だと思ってる。よぎること自体は止められなくても、やるかやらないかは、自分で選べる。

…アキさんにしては、ちゃんとしてるっすね

“にしては”は余計だわ。笑
で、頭を切り替えた。今、俺がやるべきことは一個だけ。このアカネを、無事に家まで帰すこと。それ以外、何もない。
幸いっていうか、相席屋だから店員さんもいる。まず店員さんに「連れの子が潰れちゃって、もう一人は先に帰っちゃって。俺もさっき相席しただけなんですけど、放っておけなくて」って正直に状況を説明した。一人で抱え込んで変なことにならないように、まず第三者に状況を共有しとく。これ、大事。

あー、これはだいぶ酔ってますね。お会計こちらで進めますね。お水、追加で持ってきます

すいません、助かります。この子の分も、まとめて俺が払うんで。
会計は俺が立て替えた。こんな状態のアカネに「割り勘で」とか言える状況じゃないし、後でちゃんと精算すればいい。それより、まず外に連れ出して、空気吸わせて、落ち着かせるのが先だった。
水飲ませて、休ませて、タクシーへ。とにかく無事に帰す
店を出て、ビルの外の、人通りの少ないとこのガードレールに、アカネをいったん座らせた。夜風に当てて、買ってきた水とスポーツドリンクを、ちょっとずつ飲ませる。一気に飲ませると逆に戻すから、ほんと少しずつ。

アカネさん、ゆっくりでいいから。これ、ポカリ。一口ずつね。
…んく…ごめん…なさい…めいわく…


迷惑じゃないって。気にすんな。気持ち悪かったら、無理せず吐いていいからな。
…だいじょぶ…だいじょぶ…

「だいじょぶ」しか言えなくなってる人間ほど、だいじょぶじゃないんだよな。笑 でも、しばらく風に当たって水を入れたら、少しだけ呂律が戻ってきた。完全復活には程遠いけど、最低限、ふらつきながらでも歩けるくらいにはなった。
ここで、アカネのスマホの家の情報を頼りに、住所だけ確認させてもらった。本人に「ここで合ってる?」って画面見せて、辛うじて「うん…」って頷くのを確認。意識がない子を勝手にどっか連れてくのは絶対ダメだから、ふらふらでも本人に確認を取れる状態まで回復するのを待った、っていうのが正直なとこ。
で、タクシーを拾った。ここで一個、自分の中で決めたことがある。タクシーに、二人で乗らない。

え、一緒に乗って送ってあげないんすか?

そこ、めちゃくちゃ迷ったんだよ。一人でタクシー乗せて、もし途中でまた潰れたら…とも思った。でもな、潰れた女の子と密室で二人きりって、それ自体がアウトなんだよ。本人にとっても、後から「何かされたかも」って不安にさせる。だから運転手さんに事情話して、行き先と、見守り頼んだ。
正解だったかは、正直わからない。一緒に乗って家まで送り届けるのが一番安全、って考え方もある。でも俺は、密室で二人きりになるリスクのほうを取りたくなかった。だから、運転手さんに「この子、だいぶ酔ってて。住所ここなんで、着いたら起こしてあげてください。何かあったらこの番号に」って、俺の連絡先までメモして渡して、ドアの外から見送る形にした。
…って書くと、なんかすげえ慎重で疑り深い男みたいだけど、要するに、誰がどう見ても「何もしてない」状態を、自分でちゃんと作っときたかっただけ。潔白って、自分で言うもんじゃなくて、状況で証明するもんだから。
…ありがとう…ございました…ほんとに…


おう、気をつけてな。着いたらちゃんと水飲んで寝ろよ。
タクシーのテールランプが見えなくなるまで、しばらく突っ立って見送った。で、俺は一人で、反対方向の駅に向かって歩き出した。
何もせず帰った夜。ダサいけど、ちょっとだけ清々しい
一人で夜道を歩きながら、なんとも言えない気分だった。
正直に言えば、相席屋に行く前の俺は、「今日はいい出会いあるといいな」くらいの下心マンマンで出かけてたわけだ。それが、結果、何もなく、ただ酔っ払いを介抱して、タクシー代と飲み代を立て替えて、一人で帰ってる。財布は軽くなって、得たものはゼロ。

(心の声)…なんか俺、ただの介護員じゃね? 今日の出費、なんだったんだ。
正直、ちょっとダサい。笑 ナンパしに行って、介抱して終わり。役得を一瞬でも期待してた自分を思い出すと、ちょっと恥ずかしい。武勇伝には一個もならない夜だ。
でもな。不思議と、嫌な気分じゃなかった。むしろ、足取りが妙に軽かった。
たぶん、自分で自分のことを「ちゃんとした」って思えたからだと思う。あの状況で、変なことしようと思えばできた。でも、しなかった。一瞬よぎった気持ちを、自分で「いや無理だろ」って潰して、最後まで筋を通した。誰も見てなくても、自分は見てる。その自分に、胸張れる夜だった。

なんか、いい話っすね。アキさん、見直したっす

やめろって。照れるだろ。笑 別にいい話にしたいわけじゃなくてさ。これは普通のこと、当たり前のことなんだよ。当たり前のことを、当たり前にやっただけ。

でも、できない人もいると思うっす

…まあ、それだけは、絶対できない男にはなりたくないわな。
家に着いて、一応、運転手さんからの連絡がないかスマホ見た。何もなし。連絡がない=無事に着いた、ってことだろう。それを確認して、その日はそのまま寝た。出会いも何もなかったけど、なんか、よく眠れた夜だった。
潔く引く、っていう意味では、一目惚れした子にきれいにフラれて引き下がった玉砕の話とも、ちょっと通じるものがあるかもな。あっちは「振られたら引く」、今回は「潰れてたら手を出さない」。どっちも、踏み込まないことが正解だった、って点では一緒だ。
後日。シラフのアカネから、丁寧すぎるLINEが来た
で、話はここで終わらなかった。
あの夜、運転手さんにメモで渡した俺の連絡先、あれをアカネが後で見たらしい。三日後くらいに、知らない番号からLINEが来た。
先日は本当にありがとうございました。相席でご一緒したアカネです。あの日、記憶がほとんどなくて…運転手さんから連絡先のメモ預かってて、ご迷惑をかけたお詫びをどうしても伝えたくて


お、無事だったみたいで良かった。気にしなくていいよ。ちゃんと家着けた?
はい、おかげさまで…。あの、立て替えていただいたお金、ちゃんとお返しします。あと、ポカリも


ポカリはいいって。笑 飲み代はまあ、機会あれば。気にしすぎ。
シラフのアカネは、あの夜のヤケ酒モードとは別人で、めちゃくちゃ礼儀正しかった。というか、恐縮しまくってた。「記憶がほとんどない」「ちゃんとお返しします」を、何回も繰り返してた。よっぽど自分が潰れたことを反省してたんだろうな。
で、ここがちょっと嬉しかったんだけど。アカネ、こう言ってくれた。
正直、記憶ないなりに、すごく不安だったんです。男の人に介抱されたって聞いて。でも、運転手さんに事情まで話して、別々に帰してくれてたって聞いて…ちゃんとした人だったんだなって、安心しました


あー、それは良かった。まあ、当たり前のことしただけだから。
その”当たり前”が、できない人多いと思うので。本当に、ありがとうございました

タクシーに一緒に乗らなかったこと、運転手さんに事情を話したこと。あの時の俺の、ちょっと過剰なくらいの慎重さが、結果的にアカネを「安心」させてた。これは、正直、後から効いた。その場では「疑り深い男っぽくてダサいかな」とすら思ってた行動が、ちゃんと意味を持ってた。

えー、それ、結果的にめっちゃ信頼されてるじゃないすか

まあな。でもこれ、信頼を狙ってやったわけじゃないからな。狙ってやったら、それはそれでキモいだろ。
念のため言っとくけど、ここから「じゃあ恩を売ったし、いい感じになるか」みたいな下心は、出さなかった。出したら、あの夜に筋を通した意味が全部チャラになる。アカネが「ちゃんとした人」って思ってくれたのは、俺が見返りを求めてなかったからで、そこで見返りを求めたら、ただの偽善者だ。
結局、飲み代は後日、アカネがどうしてもって聞かなくて、近所のカフェでサクッと受け取った。シラフのアカネと、昼間のカフェで、コーヒー一杯。色っぽい空気は一個もない。ただ、お互いちょっと笑い合って、それで解散した。
そのカフェで、ひとつだけ印象に残ったやり取りがある。
あの日、なんで知らない私のこと、そこまでしてくれたんですか?


んー…逆に、目の前で潰れてる人、放って帰れる? 俺、それができる男になりたくないだけ。
…ふふ。なんか、いい答えですね

別に、口説き文句のつもりじゃなかった。本音をそのまま言っただけ。でもまあ、アカネがちょっと笑ってくれたから、それで十分だった。
その後アカネと、恋人みたいな関係になったかって言うと、なってない。たまにLINEで近況報告し合うくらいの、変な戦友みたいな距離感。それはそれで、悪くない。色恋にならなくても、「あの人はちゃんとした人」って一人の人間に思ってもらえたこと、それ自体が、その夜一番の収穫だった気がする。
信頼って、ベッドの上で作るもんじゃない。むしろ、何もしないことで作られることがある。これ、相席屋だろうがマッチングアプリだろうが街だろうが、場所は関係ない。誠実さがそのまま出る瞬間って、こういう「相手が弱ってる時」なんだよな。アプリで知り合った相手相手でも、結局、最後にものを言うのは小細工じゃなくて、こういう地の部分だと思う。(どのアプリが、っていうのは、ちゃんと紹介できる準備ができたら別で書く)
ナンパの記事をこれだけ書いといて言うのもなんだけど、口説きのテクとか、清潔感とか、そういうのは清潔感の記事や落とし方の設計図にいろいろ書いてる。LINEの距離感の話はこっち。でも、それ全部の土台にあるのは、たぶん「越えちゃいけない線を、絶対に越えない」っていう、すげえ地味なやつだ。

アキさん、今日はちょっと、いい人っぽかったっす

“っぽかった”じゃなくて、いい人だわ。笑 …まあ、明日からはまた普通にナンパしに行くけどな。
教訓らしい教訓を語るのはやめとく。柄じゃない。ただひとつだけ。潰れて何も判断できなくなってる相手に手を出すのだけは、ナンパ師がどうとか以前に、人としてのライン。そこだけは、何があっても越えない。俺がこの先どれだけ軽いノリで遊んでても、ここだけは、ずっと譲らないつもりです。
…と、たまにはちょっとだけ真面目なことも書いて、今日はおしまい。財布は軽くなったけど、まあ、いい夜だった。笑
全部実際に使った俺の本音ランキング。目的別の使い分けも載せてる。
この流れの次に読む記事。
読み終わったあとに動きやすいように、連絡、街での流し方、次の場づくりに近い記事を置いています。


