小江戸の蔵造りで声かけ→26歳・古着屋店員ナナミ
蔵造りの町並みと時の鐘で有名な小江戸・川越でストナンしてきた話。昼は観光客でごった返す通りで空振り続き、夕方に観光客が引いた裏通りの古着屋で、レトロ好きで人見知りの26歳店員ナナミに当たった。好きな物の話だけ止まらなくなる子と、地元の喫茶からバーまで。川越の昼と夜の二層を歩いた出動レポ。
古着屋店員(川越・蔵造りの裏通りの店)PLACE渋谷
現場レポHOOK声かけから
次の店へ
今日は川越に出動してきた話。埼玉の川越、いわゆる「小江戸」。蔵造りの黒い町並みと、時の鐘っていう木造の鐘楼があって、観光地としてめちゃくちゃ人気の街。池袋から東武東上線で三十分ちょっと、都心から日帰りで江戸の景色が見られるってことで、休日は外国人観光客から修学旅行から、芋スイーツ食べ歩き勢まで、とにかく人で溢れてる。
先に言っとくと、川越は声かけの街じゃない。少なくとも昼は。観光客が川みたいに流れてて、その大半が通りすがりで、声かけても「今日帰るんで」で終わる。実際、昼は完全に空振った。当たったのは夕方、観光客がさーっと引いた裏通りの古着屋で店番してた、ナナミ(26)。レトロ好きで、ものすごく人見知りなのに、好きな物の話になった瞬間だけスイッチが入って止まらなくなる、そういう子だった。
蔵造りの町並みは、人は多いのに声がかけられない
川越ナンパの入口、渋谷での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。
着いたのは土曜の昼すぎ。本川越の駅を出て、クレアモールっていう長い商店街を抜けると、だんだん建物が古くなって、やがて黒い蔵造りの町並みに出る。瓦屋根の重い建物がずらっと並んでて、その向こうに時の鐘がそびえてる。観光ポスターそのまんまの景色で、写真撮ってる人だらけ。
で、歩いてる人の数だけで言えば、渋谷のセンター街並みにいる。女の子も死ぬほどいる。なのに、声がかけられない。理由はすぐわかった。みんな「移動してる」か「連れがいる」かのどっちかなんだわ。家族連れ、カップル、女子の二人組三人組、外国人のツアー。一人でぼーっとしてる女の子が、まずいない。観光地って、目的があって来てるから、みんな歩く速度が速いし、次の店、次の写真スポットに向かってる。
| エリア | 昼の様子 | 声かけ的には |
|---|---|---|
| 蔵造りの町並み・時の鐘 | 観光客の本流。写真と食べ歩きで人だらけ | 人は最多だが通りすがりばかり。昼は厳しい |
| 菓子屋横丁 | 駄菓子・芋スイーツの狭い路地。家族連れ多め | 混みすぎ&連れ多め。話しかける隙が薄い |
| 蔵造りの裏通り・路地の個人店 | 古着屋・喫茶・雑貨。観光客がやや引く | 夕方、店番や常連の地元の子が出てくる |
| クレアモール商店街 | 本川越〜川越駅の生活動線。地元の若い子も | 夕方以降、地元時間に切り替わる |

人めっちゃいるのに声かけられないって、どういう状況なんすか。

全員「観光ルートを歩いてる最中」なんだわ。横から入ると、ただの通行の邪魔。渋谷の暇な街ブラとは速度が違う。
それでも一応、本流の通りで二、三回トライした。芋のソフトクリーム片手に時の鐘を撮ってた女の子二人組に「それ、ここの名物のやつですか」って聞いたら、「あ、はい、そうみたいですー」で会話が終わった。観光客同士の「みたいですー」、つまりその子も初めて来た側で、地元の話も次に行く店の話も持ってない。情報の交換すら成立しない。当たり前なんだけど、観光客に観光地のことを聞いても、何も出てこない。
もう一回、団子屋の前でベンチに座ってた一人の子にいったら、これはもう連れがトイレ行ってるだけで、戻ってきて即終了。昼の川越、これの連続。一時間ちょいで、声をかけられる体勢の子に三回しか会えてない。打席が、とにかく少ない。
夕方、観光客が引いた裏通りに入る
十六時を回ったあたりで、町並みの空気が変わり始めた。観光客って、帰りの時間で動くから、夕方になるとさーっと潮が引くみたいに減る。日帰り勢が一斉に駅に向かうんだよな。本流の人波がスカスカになってくると、それまで人混みで見えてなかった、裏通りの個人店が急に目に入るようになる。
蔵造りのメインの通りから、一本細い路地に入った。観光ポスターには載らない側の川越で、古い民家を改装した雑貨屋とか、こぢんまりした喫茶とか、地元向けっぽい店が点々とある。その中に、間口の狭い古着屋があった。店先のラックに、ヴィンテージっぽいワンピースとか、色の褪せたデニムが吊るしてあって、看板も手書き。いかにも「好きな人がやってる店」って感じ。
俺、古着は元々好きなんで、ふらっと中に入った。最初はナンパとか抜きで、普通に物を見るつもりで。店は奥に細長くて、棚に年代物のシャツとか、ガラスケースに古いアクセサリーが並んでる。レジの奥に、エプロンつけた女の子が一人。本を読んでて、客が入ってきても顔だけ上げて「いらっしゃいませ」って小さく言って、また下を向いた。愛想がいいタイプじゃない。むしろ人見知りっぽい。

(これは話しかけても塩そうだな……)
で、棚を見てたら、一着、すごく状態のいい古い半袖のブラウスがあった。襟の形が今のと全然違う、丸くて大きいやつ。値札を見ても年代がわからなかったから、これだけ素で店員に聞いた。

これ、いつくらいのものか分かります? 襟の形、見ない感じだなと思って。
あ……それ、たぶん六〇年代です。


六〇年代。けっこう古いんすね。
……襟、ラウンドカラーって言うんですけど。当時のは生地が、今のと違って……あ、ごめんなさい、長くなる。

ここで初めて、ちょっとだけ笑った。「あ、ごめんなさい、長くなる」って、自分で言って止めるの。喋りたいんだけど、喋りすぎる自覚があって、ブレーキかけてる感じ。人見知りなのは態度でわかるんだけど、物の話になった瞬間だけ、口が勝手に動いてた。

いや、続けてください。生地、どう違うんすか。
……ほんとに聞きます?


聞きます。買うかは、それ次第で。笑
……じゃあ。これ、当時の織りで……。

そこから、止まらなくなった。さっきまで顔も上げなかった子が、生地の織り、ボタンの素材、当時の縫製、なんで今これが作れないのか、みたいな話を、目だけ少し輝かせながら、ぼそぼそ、でも途切れずに喋った。声は小さいまま。でも内容の密度がすごい。人見知りの子の、好きな物のスイッチが入った時の喋り、嫌いじゃない。むしろ聞いてて面白い。
店を閉めるまで、古着の話を聞いていた
気づいたら三十分くらい、棚の前で立ち話してた。客は他に一人入ってきて、すぐ出てった。ナナミは喋りながらも、その客にはちゃんと小声で「いらっしゃいませ」って言って、また俺との話に戻る。仕事の手は抜いてない。
ナナミ、26歳。川越の生まれじゃなくて、隣の市から通ってて、この古着屋で働いて三年目。大学のころからレトロな物が好きで、古い喫茶とか、昭和の食器とか、廃盤になった物に弱いらしい。

川越で働いてるの、町並みが古いからとか? 好きそうじゃないですか、こういうの。
それは……ちょっとあります。でも蔵のほうは観光地すぎて。私が好きなのは、こっちの、誰も来ない路地。


あー、わかる気がする。表通りは映え狙いの人だらけだもんな。
……写真撮ったら帰っちゃう人、多いから。古い物、別に見てくれてはいない、みたいな。

ここはちょっと拗ねたみたいな言い方で、でも音量はずっと小さい。観光客に慣れてるぶん、「物には興味なくて景色だけ消費して帰る人」を、たぶん毎日見てる。だから俺が古着の生地の話を最後まで聞いたのが、この子の中で珍しい客に分類されたっぽい。態度がちょっとだけ、柔らかくなってた。

人見知りの子に喋らせるの、難しそうっすね。アキさんどうしたんすか。

どうもしてない。俺がそのブラウス本気で気になっただけ。質問が嘘じゃなかったから、向こうも嘘で返さなかった、それだけだわ。
しばらくしたら、店じまいの時間になった。ナナミが「すいません、もう閉めるので」ってラックを店内に入れ始めたから、手伝った。重いラックを二人で運んでたら、ちょっと笑ってた。で、俺はその六〇年代のブラウス、結局買った。聞いといて買わないのも違うなと思って。レジで包んでくれてる間に、ダメ元でいった。

このあとさ、もし時間あったら、この辺で一杯どうですか。古い喫茶とか、好きでしょ。
え……。


あ、無理なら全然。ブラウスの礼もしたいなと思っただけなんで。
……喫茶なら。一軒だけ、いいとこ知ってます。

「喫茶なら」っていう条件付きのOK、この子らしくて笑った。飲み屋じゃなくて、自分の得意分野の場所なら出られる、っていう。人見知りが、自分のホームを指定してきた感じ。
地元の喫茶で、観光客じゃない川越を教わる
ナナミが連れてってくれたのは、メインの通りからさらに離れた、看板も小さい古い喫茶店だった。観光客は絶対に見つけられない場所。中は昭和で時間が止まってて、赤いビロードの椅子、琥珀色の照明、古いレコードがかかってる。ナナミは入った瞬間、ちょっと背筋がゆるんだのがわかった。店の人とも顔見知りっぽくて、軽く会釈してた。
ここ、プリンが、すごいんです。固いやつ。


固いプリン派だ。最近やわらかいのばっかだもんな。
……っ、わかってる人だ。

固いプリンに食いついたら、また少しスイッチが入った。やわらかいプリンが流行りだしてから固いのが減った話、川越にまだ残ってる昭和の喫茶のリスト、潰れちゃった店の話。観光地の表通りの裏で、地元の人が通う川越が、ちゃんとあった。ナナミの口から出てくる川越は、時の鐘も芋スイーツも一個も出てこない、古い喫茶と廃盤の物でできた川越だった。

同じ街なのに、昼に俺が歩いてた川越と全然違うな。
昼の蔵のとこ、私あんまり行かないので。人多いの、ちょっと苦手で。


人見知り、けっこうガチなんだ。
ガチです。今もほんとは、ちょっと……。

「今もほんとは、ちょっと」って言いながら、目は合わせない。けど、プリンの皿はとっくに空で、コーヒーもおかわりしてた。喋るのが苦手なはずの子が、気づいたら一時間以上、ぼそぼそ喋り続けてる。緊張してるって言葉と、帰らずに座ってる行動が、ちょっとずれてた。そのずれが、人見知りの子のいちばん正直なとこだと思う。

苦手って言いながら、ずっと喋ってるんすね。

な。口では苦手って言うんだよ。でも皿空にして居座ってるから、まあそういうことだろうなと。俺は黙ってコーヒー頼み足した。
途中、ナナミがレコードの曲が変わったタイミングで「あ、これ好き」って、少しだけ声が大きくなった瞬間があった。さっきまでの店番の小声と全然違う声。好きな物の前でだけ素が漏れる子で、その漏れ方が、古着のときも、プリンのときも、レコードのときも、全部おんなじだった。
路地のバーで、声が一段階だけ大きくなる
喫茶を出たら、外はもう完全に夜だった。観光客は一人もいなくて、昼の喧騒が嘘みたいに静か。蔵造りの黒い建物が、夜はライトアップされてて、人がいないぶん、昼より迫力がある。ナナミと並んで歩いてたら、
夜の蔵、こっちのほうが、私は好き。


人いないとこ好きすぎだろ。笑
……静かなほうが、物がちゃんと見えるので。

「物がちゃんと見える」って言い方が、なんかこの子の全部な気がした。人より物を見てる。で、たぶん人もちゃんと見てて、ただ言葉にするのが下手なだけ。喫茶でこっちが固いプリンに食いついたのも、古着の生地を最後まで聞いたのも、ちゃんと見られてたっぽい。
このまま終わるには惜しかったから、もう一軒いった。路地の奥の、これも観光客は知らないだろう小さいバー。カウンターだけの店で、ナナミはここも知ってた。やっぱり地元時間の川越を、この子は全部押さえてる。

ナナミちゃん、珍しいね、連れがいるの。
……っ、言わないでください。


(マスターに弱み握られてるな、この子)
バーのカウンターに座ったら、喫茶のときよりさらに声が出てた。一杯飲んだのもあると思う。好きなお酒の話、古い映画の話、いつか自分の店を持ちたい話。声は相変わらず大きくはないんだけど、語尾に「ごめんなさい、長くなる」が出なくなってた。ブレーキを踏まなくなってた、というか。

さっきから、長くなるって言わなくなったな。
……あ。


いや、いいことだと思う。聞いてて楽しいし。
……変な人。古い物の話、こんなに聞く人、いない。

肩がぶつかる距離になってた。カウンターの椅子が近いせいもあるけど、それだけじゃない。で、結果だけ書くと、その夜はそのまま、いい感じになった。ここから先はいつも通り書かない。
毎回書いてるけど、これは合意のある大人同士の話。ナナミは終始、自分のペースで、嫌なら喫茶の「喫茶なら」の時点で来てない。古着屋で「もう閉めるので」って線を引いてきたのもこの子だし、その線をこっちが無理にどうこうしたわけじゃない。閉店間際の店に居座って粘ったわけでもないし、酔わせて流れを作ったわけでもない。昼に「自撮り派なんで」じゃなくて「今日帰るんで」で弾かれた組には、その場で引いて次に行った。乗ってこないなら、俺はそこで引く。それだけ。
その後のLINEと、川越声かけのメモ
ナナミとはLINEを交換して、今もたまにやり取りしてる。文面は喋りより饒舌で、店に新しく入った古着の写真とか、見つけた喫茶の話を、こっちが聞いてもないのに送ってくる。好きな物の話だけ饒舌なのは、対面と同じ。逆に「元気?」みたいな普通の連絡には、既読だけついて返事が遅い。笑
この前のブラウス、似たやつまた入りました。今度はちゃんと年代わかるやつ。


買いに行くわ。また生地の話、聞かせて。
……長くなりますけど。

連絡の距離感は、相手のテンポに合わせるのに尽きて、こういう物の話だけ饒舌な子に、無理に世間話で詰めても返ってこない。向こうが乗ってくる話題で、短く返す。このへんの追わない距離感はLINE攻略のまとめに書いた通り。
- 余裕のある大人の子が多い印象だから、変な探り合いが少なくてやり取りが楽だった
- 「会う前提」で繋がる空気だから、いいなと思った子とも上品なまま話を進めやすい
- 下見だけなら無料。本気で会いに行くなら、男は有料で動くのが結局いちばん早かった
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川越の声かけメモとして残しとくと、昼の蔵造りの本流は、人は最多なのに通りすがりばっかりで打席が増えない。観光客に観光地のことを聞いても情報が返ってこないし、連れがいる確率も高い。狙うなら夕方、観光客が引いて、裏通りや個人店から地元の人や店番の子が出てくる時間。今日も昼は三打席で全部空振って、当たったのは結局、夕方の路地の店だった。打席の少なさを考えると、川越みたいな観光地は声かけ一本だと効率が悪い。だから俺は、こういう打席が出にくい街に行く日ほど、保険でマッチングアプリも並行で回してる。アプリの距離設定なら、観光客じゃなくて「川越や近隣に住んでる子」だけ拾えるから、観光地のノイズを抜いて地元の母数だけ足せる。昼に滑った時間も、移動の電車の中でアプリ一件、みたいに打席を増やせるのがでかい。
埼玉つながりだと、前に行った大宮で声かけした夜は、ターミナルで打席が無限にあって、小細工が読まれる勝負だった。川越はその真逆で、打席は少ないけど一個一個が濃い。同じ郊外でも船橋で声かけした夜は生活動線の駅前で、これも観光地とは別物の地元密度だった。どのエリアがどういう性格か、全体像は東京・近郊のナンパスポットまとめと見比べると分かりやすいと思う。声かけで打席が出にくい日のアプリの併用は、マッチングアプリの比較ランキングのほうにまとめてある。
川越はまた行く。次はナナミの言ってた「年代わかるブラウス」を見に、夕方の路地から入る予定。あと固いプリンの喫茶、もう一回行きたい。
渋谷の次の動きまで見る。
声をかけた後、どの街でどう流すか。場所選びと飲みの入口に近い記事を並べています。


