パティシエ25歳、甘いの作るのに辛党な夜
ペアーズで出会った洋菓子店のパティシエ・ナズナ(25)。仕事は朝3時起き、口数は少なめで、ケーキ作るプロなのに本人は無類の辛党。生活時間が世間とズレてる職人気質の子と、昼から夕方にかけて会ってきた——マッチングアプリでパティシエの女性と会った夜(というか昼)のリアルな体験談。
洋菓子店のパティシエ(早朝勤務)PLACE現場
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今回はペアーズで会った、洋菓子店でパティシエやってるナズナの話。25歳。先に書いとくと、平日の昼から夕方にかけて会って、最後はちゃんといい関係になれた回。ただこの子、朝3時起きの早朝勤務で、デートが「昼デート」になったり、店選びがいちいち変だったりした。そのへんが面白かったんで書いとく。
なにせ仕事が朝3時起き。会った最初のほうは口数も少なくて、正直「これ、間が持つかな」とちょっと不安だった。でも、本人が作ってる甘いものの話と、本人がそれを全然食べない辛党だっていう話になった瞬間から、急にスイッチが入った。職人気質の子の「自分の手仕事」の話って、こんなに止まらなくなるんだ、っていうのがこの日の収穫だった。
ペアーズの体験談はこれまでも何本か書いてて、堅実でこっちが試されてる気がした公務員の子の回もあれば、段取りで全部仕切ってくる商社勤めのバリキャリの子の回もある。あの商社のトモミが「仕事のテンポで押してくる人」だったとしたら、ナズナは「手を動かしてる時間でできてる人」。喋りより手が先に動くタイプだった。同じペアーズでも、相手の仕事のクセでデートの空気がこんなに変わるのか、っていうサンプルとして読んでもらえればと思う。
プロフに、自分で作ったケーキの写真がなかった
ペアーズ体験談の入口、現場での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。
ナズナを見つけたのは、ペアーズの「カフェ巡り」だか「お菓子作り」だかのコミュニティ経由。写真が三枚あって、一枚目が逆光で顔半分くらいの引きの自撮り、二枚目が手元——粉だらけのまな板の上で、なんかの生地をこねてる手だけの写真、三枚目が、よく分からん辛そうな赤い汁の麻婆豆腐。
正直この並び、最初は「誰の何のアカウントだ」って思った。パティシエなら、普通もっと自分の作品のケーキとか、映える焼き菓子とかを並べそうじゃん。なのに自分が作ったお菓子の写真がゼロで、代わりに作業中の手と、辛そうな麻婆豆腐。なんかこの時点で、ちょっと変わった子の予感はあった。
自己紹介も短かった。盛ってない、っていうか、サービス精神があんまりない感じ。
- 洋菓子店で働いてます。朝が早い仕事なので夜はわりと早く寝ます
- 甘いもの作ってますが、自分は辛いもののほうが好きです(笑)
- 休みが平日なので、土日希望の人とは合わないかもです
- 口下手なので、最初は喋るの下手でもごめんなさい
「甘いもの作ってますが自分は辛党」「休みは平日」「口下手」。先に欠点というか、面倒な条件を全部置いてくる感じが、逆に信用できた。盛らないし、噓もつかなそう。あと「土日希望の人とは合わないかも」を最初に宣言してるのが、ちゃんと自分の生活を分かってて、合わない人を先に弾こうとしてる感じで、地味に好印象だった。
俺は仕事柄、平日の昼間がわりと自由になる日もあるんで、そこは噛み合いそうだった。職人気質の子って、自分の手の届く範囲のことは異常にこだわるけど、それ以外には淡白、みたいなイメージがあって、どんな子なんだろうと興味が湧いた。

パティシエなのにケーキの写真ゼロって、なんか変じゃないすか。普通アピールしません?

それな。笑 でも自分の作ったもんを「映え」に使わないあたりが、逆に本物っぽくてさ。会ってみたくなったんよ。
マッチして、最初のメッセは俺から。返信は、来る時間がやたら早い。朝の5時とか6時とかに既読がついて返ってくる。
おはようございます。今もう仕込み始まる時間なので、また休憩で返します


え、もう仕事してるんすか。今まだ5時すよ。笑
朝3時起きなので(笑)アキさんのほうが夜更かしです

「アキさんのほうが夜更かし」って言われて、確かにこっちが深夜にメッセ送ってたわ、と気づいた。向こうはもう一日が始まってて、こっちはまだ前の日が終わってない。生活時間が半日くらいズレてる。これ、続けるならこっちが合わせるしかないな、ってこの時点で覚悟した。
「昼デートでいいですか」って向こうから来た
メッセを何往復かして、会う流れになったんだけど、日程と時間の出し方がもう、世間とズレてた。
水曜が休みです。あと、夜だと眠くて使い物にならないので、お昼から夕方でもいいですか


昼デート、全然いいっすよ。てか「使い物にならない」って言い方、笑った。
ほんとに19時とかには眠くなるので…ごめんなさい先に言っときます

普通、デートの誘いって夜じゃん。飲んで、いい雰囲気になって、ってのが王道。それを「夜は使い物にならない」で最初から潰してくる子は珍しかった。でも考えてみりゃ、朝3時起きの人にとっての19時って、こっちの夜中の1時くらいの感覚なわけで、そりゃ眠い。生活が世間と逆回転してるんだなと思った。
店選びは俺に任せてくれたんだけど、ひとつだけ向こうから条件が来た。「甘くない店がいい」と。パティシエなのに。

え、カフェとかパフェの店じゃなくていいんすか。仕事柄好きかと思った。
毎日甘いの嗅いでるので、休みの日は無理です(笑)辛いか、しょっぱいのがいい


わかった。笑 じゃあ昼から辛いの食える、ちょっと変わった店探しとく。
プロフの麻婆豆腐がここで効いてきた。あ、あの写真ガチだったんだ、と。昼から辛い四川料理が食える店を一軒押さえた。LINEはアポが固まってから交換したんだけど、ナズナのLINEは絵文字ゼロ、文も短い。代わりに、店の予約が取れたって送ったら「ありがとうございます。楽しみです」だけが、やけにまっすぐ返ってきた。飾りはないけど噓もない、っていう文面だった。
会った最初、ほんとに喋らなくて焦った
水曜の14時、待ち合わせの駅前。現れたナズナは、写真の引きの自撮りより、姿勢がよくて目に力があった。ただ、第一声からして、控えめだった。
あ…アキさん、ですよね。はじめまして


はじめまして。おお、ちゃんと辛いの食える格好で来てくれた。笑
…はい(笑)汗かくと思って

店に向かう道、正直、会話があんまり続かなかった。俺が振った話に「はい」「そうですね」で返ってきて、そこで一回止まる。プロフ通りの口下手だ。こういう時、無理に質問を畳みかけると相手が尋問されてる気分になるんで、俺はわざとちょっと黙ったりした。それでも、間が空く。昼の14時、シラフ、口数少ない子。正直「これ、夕方まで持つかな」って一瞬よぎった。
店に着いて、麻婆豆腐と、汁なし担々麺と、よく分からん赤い炒め物を頼んだ。料理が来て、ナズナがひと口食べて、その瞬間だけ表情が変わった。
…あ、これ、ちゃんと辛い。花椒もしっかり効いてる


お、急に喋った。笑 辛いの当たりだった?
当たりです。こういう店、自分じゃ見つけられないので…うれしい

「うれしい」がまっすぐ過ぎて、こっちが照れた。お世辞とか社交辞令の混ざってない、本気の「うれしい」だった。さっきまで「はい」「そうですね」だった子が、辛いものを前にした途端、ちゃんと喋るようになった。味の話なら口が回る。これは何かのとっかかりになるな、と思った。
「甘いの作るのに辛党」の理由を、手で説明された
担々麺を食べながら、流れで聞いてみた。なんで甘いもの作ってんのに、自分は甘いの食べないのか、と。そしたら、それまでの口下手が噓みたいに、ナズナが急に喋りだした。
味見で一日中ずっと甘いの口に入れてるんですよ。生地とかクリームとか。だから自分の時間は、もう甘いの受け付けなくて


あー、仕事で食い飽きてんのか。職業病みたいなもんか。
そうそれ。甘いのは作るもので、食べるものじゃない感じ(笑)

「甘いのは作るもので、食べるものじゃない」。この一言が、なんかこの子のことを全部言ってる気がした。作ることと、味わうことが、本人の中で完全に別なんだ。仕事の話になると、手が動く。空のお絞りを使って、生地を絞り袋でこういう角度で絞るとか、温度がどうとか、ジェスチャーで説明しだす。喋りは下手なのに、手の動きが妙に雄弁だった。
聞いてると、朝3時起きの生活も、本人はそんなに苦に思ってないらしかった。誰もいない暗いうちから厨房に入って、自分の手で一個ずつ仕上げていく時間が、いちばん落ち着くんだって。逆に、土日に世間が遊んでる時間が、自分は仕事で、平日の真っ昼間に一人で街にいると、社会から半分外れてるみたいでちょっと寂しい、とも言ってた。世間とズレた時間で生きてる子の、ズレてるからこその本音だった。

アキさん、口下手な子ってどう転がすんすか。俺、沈黙きついっす。

こっちが喋らせようとせんことよ。この子は手仕事の話だけは止まらんかったから、そこに乗っかっただけ。沈黙を埋めにいかんでいい。
俺はべつに気の利いた話をしてたわけじゃなくて、ナズナが手の話をしてる間、ただ「で、それからどうすんの」って聞いてただけ。手仕事の人は、自分の領域の話なら勝手に喋る。沈黙が怖くて質問を畳みかけるより、向こうがスイッチ入ったとこにそっと乗っかるほうが、結果ずっと喋ってくれた。
夕方、店を変えたら、別人みたいに喋りだした
四川の店を出て、まだ16時。明るい。ナズナが「夜まで持たないので」って言うんで、軽く飲める二軒目に移った。カウンターだけの、これまた甘くない、塩っ気のあるアテが出る立ち飲みっぽい店。ハイボールを頼んだナズナは、一杯入ったあたりから、昼の口下手が嘘みたいに口数が増えてきた。
わたし、最初うまく喋れなくてすみませんでした。人見知りで、最初の三十分が毎回ダメで


いや全然。むしろ辛いの食ってから急に喋りだしたの、面白かったわ。
ほんと?(笑)辛いの食べると、なんか気がほぐれるんですよ

「辛いの食べると気がほぐれる」って、この子なりの緊張のほぐし方なんだろうな。最初に「甘くない店」を指定してきたのも、ただの好みじゃなくて、自分が喋れるようになるための準備だったのかもしれない。そう思うと、あのプロフの麻婆豆腐の写真が、ちょっと健気に見えてきた。
飲みながら、仕事を始めたきっかけとか、いつか自分の店を持ちたいとか、そういう話を、昼とは別人みたいなテンポで喋ってくれた。喋りが滑らかになっても、内容はやっぱり「自分の手でこうしたい」って話ばっかで、芯はブレてなかった。手を動かすことが本当に好きな子なんだなと、改めて思った。
アキさん、わたしが喋るの待っててくれたでしょ。最初


え、バレてた。笑
急かされると、もっと喋れなくなるので…助かりました

そう言われた時の、グラスを両手で持ってる感じが、昼に絞り袋の説明してた時の真剣な手つきと、なんか似てた。手の使い方に、その人が出るんだなと思った。時間が夕方に傾いて、店の外がオレンジっぽくなってきて、なんか世間の「夜」より早い時間に、いい空気になっていった。
そのあとは流れで、ちゃんといい関係になれた。詳細は毎回どおり書かない。当然、合意のある大人同士の話で、無理も押しも一切なし。それだけは毎回書いとく。俺は基本、向こうが乗ってこなかったらその時点で引くタイプなんで、この日もそこは変わらない。昼から始まったデートが、世間が夜になる前に綺麗に流れていったのが、なんか妙に新鮮だった。
その後。水曜の昼が、二人の定位置になった
ナズナとはその後も続いてる。連絡のリズムが独特で、向こうからのLINEはだいたい朝の早い時間に来る。こっちがまだ寝てる5時とかに「おはようございます。今日は焼き菓子の日です」みたいな、業務日誌みたいな短いやつが届いてる。最初は早すぎてビビったけど、今は朝起きて既読つけて返すのが、わりと習慣になった。
水曜休みです。また、あの辛い店行きたい。次はもっと辛いの頼んでいい?


お、いいね。てか今度は俺が辛いの耐えられるか心配。前回ちょっと汗だくだったし。笑
じゃあ中辛にしてあげます(笑)

「中辛にしてあげます」って、最初の三十分まったく喋らなかった子とは思えないくらい、軽口が出るようになった。会うのはだいたい向こうの休みの水曜、時間は昼から夕方。俺は別に頑張って向こうに合わせてるわけじゃなくて、ナズナの朝が早い分、昼に会うほうがこっちもラクだったりするんで、たまたま噛み合ってるだけだと思う。
あと、この前ナズナが、店で出すには形が悪くてはじいた焼き菓子を、紙袋に入れて持ってきてくれた。「これは売り物にならないやつだから」って、ちょっと照れながら渡してきて。自分は甘いの食べないくせに、人にあげる分はちゃんと美味しいやつを選んでて、そういうとこが職人だなと思った。
ナズナとはペアーズで出会った。朝3時起きで休みは平日、世間が遊んでる時間に厨房にいるような子だから、俺がその気になっても外で行き合うことはまずなかった。条件で「平日休み」「夜は早い」を先に置いといてくれたぶん、こっちもアポが組みやすくて、お互いの空いてる隙間にすっと収まった。
- 余裕のある大人の子が多い印象だから、変な探り合いが少なくてやり取りが楽だった
- 「会う前提」で繋がる空気だから、いいなと思った子とも上品なまま話を進めやすい
- 下見だけなら無料。本気で会いに行くなら、男は有料で動くのが結局いちばん早かった
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最後に余談。あれ以来、ナズナの朝のLINEは、その日に何を作るかの報告が定番になった。「今日はモンブランの日」とか「今日はひたすらタルト」とか。本人は相変わらず甘いのを食べないんで、いつか俺が、ナズナの作ったケーキを「お前これ食えよ」って食わせてみたい、ってこっそり思ってる。
会った後の流れまで、次に読む。
アプリで会ったあとに失速しないように、連絡、待ち合わせ、次のデートへ繋がる記事を置いています。


