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【長野ナンパ】権堂と善光寺下を歩いた夜と、地元の子の距離感

【長野ナンパ】権堂と善光寺下を歩いた夜と、地元の子の距離感
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STREET REPORT / 東京

権堂と善光寺下を歩いた夜と、地元の子の距離感

八月の長野は、夜になると本当に涼しい。権堂アーケードと善光寺下を二晩歩いた記録。声をかけた三回のうち二回は数秒で終わって、三回目に権堂の路地のカウンターで隣になった信用金庫のミオ(25)と二時間。エリアごとに何が見えて、どんな店に入れるかも表にした。

長野ナンパ東京読了 14分
01 STREET声をかける02 WALK東京で流す03 DRINK店で温度を上げる04 CLOSE次へ運ぶ
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TYPEミオ 25歳
信用金庫の窓口
PLACE東京
現場レポ
HOOK現場感を
そのまま読む

長野駅の善光寺口に出た瞬間、風が冷たくて腕をさすった。八月の、お盆が明けたばかりの夜。東京を出るときはホームで背中に汗が伝ってて、新幹線の中で一回冷えて、降りたら外のほうが涼しい。ビルの電光の温度表示が二十二度台を出してて、二度見した。標高が三百メートル台あるらしくて、盆地だから昼はしっかり暑いのに、日が落ちた瞬間に空気が入れ替わる。上着を持ってこなかったことより先に、この気温で夜中まで外にいられるのか、と思った。

仕事の立ち会いで二泊三日。昼は拘束されるけど夜は完全に空いてるから、二晩とも歩いた。一晩目は権堂と、その先の善光寺下のほうまで。二晩目も権堂。二晩で声をかけたのは三回で、そのうち二回は数秒で終わってる。三回目に権堂の脇の路地にあるカウンターだけの店で隣になったのが、ミオって子(25・信用金庫の窓口)だった。歩いた順と、通りごとの顔と、その二時間ぶんを書いていく。

Scene 01

権堂アーケードは、屋根の下と脇の路地で別の街だった

FIELD MEMO

長野ナンパの入口、東京での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。

長野駅から北へ、中央通りをまっすぐ歩く。石畳の広い直線で、両側にビルと店が並んでて、坂がゆるく上がっていく。十分ちょっとで右手に屋根付きの通りの入口が見えて、そこが権堂。長野市で夜に飲む人はだいたいここに集まる。

屋根の下に入って最初に口から出たのが「商店街じゃん」だった。夜なのに昼の顔が半分残ってる。写真屋、靴屋、シャッターの降りた店、その隣にチェーンの居酒屋。歓楽街の中に商店街があるんじゃなくて、商店街の中に飲み屋が混じってる。天井が高いから、声が上に抜けて、通り全体が妙に静かに聞こえる。

で、歩いてる途中で足が止まった。この通り、屋根の下に神社がある。鳥居が立ってて、その奥に社殿。屋根と屋根の隙間だけ空が抜けてて、そこから提灯の明かりが落ちてる。左右は飲み屋の看板。この並びは他所で見たことがなくて、しばらく突っ立って見てた。完全に観光客の顔だったと思う。

コウ
コウ

屋根の下に鳥居って、写真で見たことあるやつっすね。あれ長野なんすか

アキ
アキ

らしいわ。両隣が普通に飲み屋の看板で、俺もしばらく突っ立って見てた。

コウ
コウ

じゃあ参拝ついでに飲めるってことっすか

アキ
アキ

順番が逆だと思うけどな。笑

夜の濃さは、屋根の下じゃなくて脇にある。屋根から一本外れた路地に入ると、雑居ビルの壁に看板が縦に積んである。二階、三階、四階。スナックとバーとラウンジ。地上を歩いてるだけだと店の数がまるで見えなくて、看板を見上げて初めて数がわかる。

権堂は長野駅から中央通り一本で繋がってて、歩いてるうちに勝手に着く。地図を出したのは初日の一回だけだった。駅前と飲み屋の場所が離れてる街の代表が高崎で、あっちは一往復ごとに十分持っていかれる。ここはその十分が要らない。

で、人がどこにいるかは地上を見てても分からない。屋根の下がいちばん空っぽに見える時間でも、人は縦に積まれた看板の中に入ってるだけだった。看板を見上げてから階段だけ上がってみたビルがあって、二階と三階が同じ系列。踊り場で煙草を吸ってる人とすれ違って、そこで引き返した。地上に人の姿が戻るのは、一次会の終わった連中が店から出てきてから。屋根が高いせいで声が上に抜けて、実際の人数よりだいぶ静かに聞こえる。

地味に効いたのが、権堂駅が地下にあることだった。長野電鉄のホームが通りの真下に潜ってて、地上からは入口の階段しか見えない。だから駅前にありがちな「人がたまる広場」が存在しない。人は通りに直接吐き出されて、そのまま店に散る。俺は宿を権堂の目の前に取った。飲んで、外に出て、三分で部屋に戻れる。夜中に一回も乗り物を使わずに済む位置に泊まれるのは、地方に出たときにはけっこうな武器になる。

Scene 02

善光寺下まで坂を上がると、聞こえるものが変わる

権堂を抜けて中央通りに戻って、そのまま北へ上がる。五分ちょっとで善光寺下のあたりに着く。長野電鉄の駅は地下にあって、地上は普通の通り。ここで空気が変わるのが、歩いててはっきり分かる。

飲み屋の看板が減って、代わりに宿と土産物屋と、黒い壁の蔵造りが増える。街灯の色がオレンジに寄って、石畳の目地に影が落ちる。二十二時をまわると、聞こえるのは自分の靴の音と、たまに後ろから来る車だけになる。静かっていうより、音の種類が減る感じ。飲み屋街の静かさは「声が遠い」だけど、こっちは「そもそも声がない」。

途中に六地蔵が並んでる場所があって、そこだけ足元が明るい。周りは宿坊の白い壁で、門のところに一つずつ低い灯りが点いてる。宿泊してる人がいるのに、話し声がまったく漏れてこない。壁が厚いのか、みんな早く寝るのか。坂の勾配は、歩くとちゃんと息が上がるくらいある。

さらに上がると仁王門があって、そこをくぐると仲見世。夜の仲見世は両側のシャッターが全部降りてて、その突き当たりに本堂だけが照らされてる。近づいていくと、写真で見てたやつの三倍くらいの体積があった。

アキ
アキ

……いや、でかいな。ここまで暗い道を上がってきたぶん、余計にでかく見えるわ。

この一帯は、声をかける場所じゃない。単純に人がいない。俺が二十二時台にここを歩いた三十分で、すれ違ったのは犬の散歩の人と、宿の浴衣で自販機まで出てきたっぽい二人組だけだった。三十分いてやったことは、坂を上って本堂の屋根を見上げただけ。誰かに声をかける気にはならなかった。

Scene 03

長野の夜、どの通りに何があったか

一晩目に三時間歩いて分かったのは、駅前・中央通り・権堂・その脇の路地・善光寺下で、全部性格が違うってことだった。端から端まで歩いても二十分ちょっとの範囲なのに、看板の数も、入れる店の種類も、すれ違う人の速さも別。紙のメモは取ってないんで、宿に戻ってからスマホに通りごとに打ち込んだ。

エリア目に入るもの入れる店俺がそこでやったこと
長野駅前(善光寺口)駅ビルの明かりと、階段に座って待ってる人チェーンの居酒屋と蕎麦屋着いた日に飯を食って通り抜けただけ
中央通り(駅〜権堂)石畳の直線と、ゆるい上り坂夜まで開いてる店は少ない歩きながら入る店を決めた(十分ちょっと)
権堂アーケード高い屋根と、その下に立ってる鳥居チェーン居酒屋・立ち飲み・焼き鳥声をかけたのはここだけ。鳥居の前でだけ人の足が止まる
権堂の脇の路地・雑居ビル壁に二階から四階まで縦に積んである看板スナック・バー・カウンターだけの店ガラス張りの七席の店で二時間動かなかった
善光寺下〜参道蔵造りの黒い壁と宿坊の白い壁、六地蔵の足元の灯り夜は宿と自販機くらい三十分歩いてすれ違ったのは三人と犬一匹
長野駅の反対側オフィスビルと駐車場宴会向けの大箱一度行って引き返した

権堂の入口には、びんずるっていう夏祭りのポスターがまだ剥がされないまま貼ってあった。俺が歩いたのは二晩とも平日の、祭りも何もない普通の夜。宇都宮にも同じように二晩だけ入った記録を書いてある。

Scene 04

二晩で声をかけたのは三回、うち二回は数秒で終わった

一晩目、二十一時四十分。屋根の下で、二人組が店の写真を撮りながら笑ってた。歩く速度を落として横から入った。

アキ
アキ

すいません、この辺で馬刺し置いてる店ってどこか分かります? さっきから同じ道を三周してて。

通りがかりの子

あー、ごめんなさい、今から迎え来ちゃって(会釈)

通りがかりの子

嘘のない断られ方をされると、こっちも粘れない。会釈が丁寧で、「ですよね」で引いた。そのまま歩く向きを変えて、屋根の反対側の端まで抜けた。

二十三時十分、路地の入口で一人でスマホを見てる子がいた。距離を詰めていってる途中で、その子が電話に出た。声のトーンで、待ち合わせの相手だと分かる。そのまま横を通り過ぎて、自販機で水を買って戻った。あれを回数に入れていいのか、いまだに分からない。宿に帰ったのが零時前で、シャワーを浴びながら「今日、何もしてないな」って声に出てた。

二晩目。同じ二十一時台に権堂へ入って、アーケードを二往復した。前の晩に見た店の並びが頭に入ってるぶん、歩くのが速いし、目線が上がる。一晩目は看板を読むだけで三時間使ってたんだと思う。

コウ
コウ

涼しいのはいいっすね。東京の八月、夜も風呂みたいっすもん

アキ
アキ

それはでかかった。汗かかないだけで、二時間くらい余分に歩けるわ。

あと、長野に来る前から一本開けてあった。東日本の地方に出るときはこれ、っていうのを決めてて、その一本のプロフに「◯日から二泊で長野」と書いておく。当日いきなり開いても、返事が動き出す頃には俺は帰りの新幹線に乗ってる。地方で動いた出会い系のときにも同じことをやってて、あれ以来ずっとこの手順。そもそも十八歳未満は登録できないやつだし、身分証を出して年齢確認を通すまでは何も動かせない。俺は免許を出したのが最初の登録のときで、それ以来ずっと通ったままだ。今回は開くだけで済んだ。

長野で返ってきたのは二件。一件は「今週いっぱい実家帰ってるー」で止まって、もう一件は既読のまま朝になった。路上で声をかけた二回はどっちも数秒で終わってるから、この時点で手元に残ってるのは画面の中の二件だけだった。

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Scene 05

ガラス張りの七席、その左隣

二十二時二十分。雑居ビルの一階に、ガラス張りで中が見える店があった。カウンターだけで七席、そのうち三つが空いてる。中が見える店は入りやすい。俺は端から二番目に滑り込んで、生と、壁に貼ってある札のいちばん上を頼んだ。

左隣に、一人で飲んでる子がいた。仕事帰りっぽい格好で、足元だけスニーカーに履き替えてる。手元は日本酒のグラス。壁の札をずっと見上げてたから、そこから入った。

アキ
アキ

すいません、その棚のやつって全部この辺の酒ですか。

ミオ

たぶん全部そう。……たぶんって言っちゃった(笑)

ミオ
アキ
アキ

いや、俺が聞いた相手が悪かったわ。笑

ミオ

悪かったんかい(笑)

ミオ

酒の名前が読めなくて、結局カウンターの中に丸投げした。

店主
店主

甘いのと辛いの、どっちが苦手ですか。それだけ教えてもらえれば

アキ
アキ

苦手が基準なんですね。……じゃあ甘くないほうで。

出てきたやつが冷たくて、想像の三倍すっきりしてた。それを飲んでる間に、隣も自分のグラスを空にして、二杯目を頼んでた。ペースが同じだと喋りやすい。

アキ
アキ

仕事帰りですか。この時間に一人って、けっこう強いですね。

ミオ

今日ちょっと長くて。ここ、一人でも変な感じにならんくて

ミオ
アキ
アキ

分かる。カウンターだけの店って、逆に一人のほうが座れるんだよな。

ミオ

でしょ。二人で来ると入れんもん、ここ

ミオ

信用金庫の窓口をやってるらしい。二十五で、入って六年目。朝いちで開ける前から人が並んでる日があって、シャッターを上げる音で気持ちが決まる、みたいな話をしてた。両替の袋がとにかく重い、っていうのを手の形でやってみせてきた。

ミオ

五百円玉の袋、持ったことある? あれほんと痛いだに。……痛いんですよ、ね

ミオ
アキ
アキ

今の、直さなくていいのに。

ミオ

出るんよ、たまに。伊那のほうの言い方で

ミオ
アキ
アキ

伊那から出てきたんだ。

ミオ

支店に配属になって三年。最初の頃、窓口で出ちゃって一回いじられて

ミオ

そこからは、出るたびに自分で直してた。「重いだに」「重いです」。「寒いだに」「寒いですね」。訂正が本人の中で自動化されてて、こっちが何も言わなくても勝手に直る。三回目くらいで俺が笑ったら、向こうも笑って、そのあとは直さなくなった。

途中で常連らしいおじさんが入ってきて、店主と天気の話を三十秒だけして、また出ていった。ミオが「あの人、週三で来て一杯だけ飲んで帰る」と教えてくれる。この店に何回来てるのか聞いたら、指を折りかけて途中でやめた。

ミオ

数えんほうがいい気がしてきた(笑)

ミオ
アキ
アキ

今、目が泳いだの見えたけど。笑

ミオ

見んといて

ミオ

話は途中でおやきに逸れた。丸なすか野沢菜か、蒸しか焼きか、で家の流派が分かれるらしい。俺が「コンビニのやつしか食ったことないです」と言った瞬間の顔が良かった。

ミオ

……それはノーカン(笑)

ミオ
アキ
アキ

ノーカンなんだ。笑 じゃあ何が正解なんですか。

ミオ

家で焼いたやつ。うちのばあちゃんのが正解

ミオ
アキ
アキ

それは俺には一生無理なやつじゃん。

ミオ

まあね(笑)

ミオ

二時間ちょい座ってて、店主が「そろそろラスト」って言うまで気づかなかった。外に出たら、風がまた冷たい。時計は零時半。

アキ
アキ

さっき、善光寺の下のほうまで歩いたんですけど。夜、あそこ真っ暗なんですね。

ミオ

え、初日から行ったの? 物好き(笑)

ミオ
アキ
アキ

門のとこまで行って引き返しました。あれ、上まで行ったらもっとでかいですか。

ミオ

……見に行く? 夜のほうがきれいだに。あ、きれいです

ミオ
アキ
アキ

そこはもう直さなくていいって。笑

中央通りをまた北へ上がった。二晩続けて同じ坂を歩いてるのに、隣に人がいるだけで距離が半分になる。石畳の上で、ミオのスニーカーの音だけが妙に軽い。仁王門の手前で立ち止まって、二人でしばらく上を見てた。門の下は街灯が届かなくて、見上げてる横顔もほとんど影だった。

坂を下りて、権堂まで戻った。宿は通りの目の前で、部屋の窓からアーケードの屋根が見える。時計は二時をまわってた。

Scene 06

翌朝、善光寺まで歩く

ミオは朝が早かった。窓口は開ける前の準備があるらしくて、六時前には出ていった。玄関でヘアゴムが見つからなくて二回戻ってきて、二回目は「もういい」って言って結局手首のを外して使ってた。最初から手首にあったやつ。

昼過ぎにLINEが来た。「昨日の店、うちの支店の担当先だに。……担当先です」。言い直しまで文字で送ってきてて、打ち合わせの最中に一人で笑うことになった。十月に東京で研修があるって話が続いてて、そのとき連絡する、で今は止まってる。来なくても、まあそれはそれだと思ってる。

着く前から開けてあった一本のほうは、あの後もどっちからも続きが来ないまま、帰る日になった。イククルのレビューを書いたときにポイントの減り方まで並べたけど、実際の遠征だとこういう空振りのほうが数としては多い。長野に入る前に3,000円ぶん足しておいて、二晩で減ったのは掲示板に投げた2通と往復ぶんの200円ちょい。声かけ二回が数秒で終わってるから、この夜に俺が動かした金は生一杯より安い。

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ミオが出ていったあと、二度寝ができなかった。昼の便まで何もないから、そのまま外に出た。中央通りをもう一回北へ上がって、石畳を踏んで、仁王門をくぐって、仲見世を抜けた。前の晩は真っ暗だったシャッターが全部開いてて、水を撒いてる音がそこら中でしてる。本堂の前はもう人がいて、お朝事は始まったあとだった。後ろのほうからだと人の背中しか見えなくて、線香の煙の匂いだけがまっすぐ届いた。

階段を下りて、参道の途中の喫茶店に入った。七時から開けてる店で、中は客が二人。トーストとゆで卵のモーニングを頼んだら、水を置きながら聞かれた。

喫茶店の人

お数珠、いただけました?

喫茶店の人
アキ
アキ

それ、どこに並ぶやつですか。俺、後ろで突っ立ってただけでした。

笑われた。並ぶ場所を、テーブルの上に指で書いて教えてくれた。髪にはまだ線香の匂いが残ってて、それを嗅ぎながらパンが焼けるのを待った。それから店員は、湯気の立ったポットを厨房から持ってきて、俺のカップにもう一杯注いでいった。

NEXT ROUTE

東京の次の動きまで見る。

声をかけた後、どの街でどう流すか。場所選びと飲みの入口に近い記事を並べています。

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ABOUT ME
アキ
ナンパ歴10年ちょい。アプリ・ストナン・相席・遠征までなんでも行く30代。実際に行って出会って、どうなったかをそのまま書いてます。