港南口と高輪口を歩いて分かった時間帯の差
品川でナンパはできるのか。港南口と高輪口を19時から23時まで何日かかけて歩いた記録。同じ駅なのに東と西で人の出方がまるで違って、路上が動く窓は港南口の21時台しかなかった。滑った一組と、立ち飲みで隣になったナナと喋った一時間まで。
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財布を薄いやつに替えたのを完全に忘れてて、改札の前で交通系ICが手元にないことに気づいた。前の財布のカード入れに刺さったまま、家の机の上に置いてある。券売機の列に並び直して切符を買って、その時点でもう予定より十五分遅い。ついでに傘も持ってない。夕方から降るかもしれないって話だったのに、玄関で「まあ大丈夫だろ」と判断して手ぶらで出た。この判断は後で普通に外れる。
で、今日は品川の話。港南口と高輪口を、19時から23時くらいまで、何日かかけて歩いた。品川って乗り換えで通る回数だけは異常に多いのに、降りて飲んだことがほとんどなかったんだわ。前に東京の駅を一通り並べて書いた記事のとき、品川の欄だけ「乗り換え」としか書けなくて、それが地味に引っかかってた。声をかけた数は全部で十いくつ、連絡先まで行けたのは一人。あと、同じ駅なのに東と西でここまで別物だとは思ってなかった。
港南口は、19時と21時で別の駅になる
品川ナンパの入口、東京での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。
改札を出て東側、港南口。出た瞬間に視界がやたら広い。頭の上に大きい歩行者デッキがあって、その先が両側ともオフィスビルにそのまま繋がってる。地面に降りなくてもビルの中まで行けるようになってて、19時台のここは、上のデッキが完全に川になってる。
流れる向きは一方向。全員が改札に向かってる。IDカードを首から下げたままの人、片手にコンビニの袋を持った人、電話しながら歩いてる人。誰も止まらないし、誰も左右を見てない。この時間に声をかけるのは、川の途中に立って手を挙げるようなもんで、実際にやってみたら三回連続で会釈だけされて流された。悪意ゼロの会釈が一番効くわ。
面白いのは、その川が19時半をすぎると急に細くなること。20時台の港南口は、上のデッキも下の歩道も、びっくりするくらい人が居ない。外に出てるのは煙草を吸いに出てきた人と、荷物を運んでる台車の人くらい。この一時間くらいが、この街で一番なんにもない時間だと思う。
初日はこれを知らなくて、19時半から20時半まで、ずっと同じ区画をぐるぐる回ってた。一周十分くらいのコースを六周して、すれ違った人の数を数えたら片手で足りた。六周目でようやく「これ、外に人が居ないんじゃなくて、全員が壁の向こうに居るんだ」と気づいた。ビルの窓から下を見たら、たぶんその瞬間に俺だけが動いてる。
この街で人が本当に止まってる場所は、実はけっこう限られてる。喫煙所のまわり、コンビニの前の柵のとこ、あとは待ち合わせに使われてる階段の下。ただ喫煙所は輪ができてて会社の人同士の会話が続いてるし、コンビニの前は五分で解散する。階段の下で立ってる人は、たいてい誰かを待ってるから、俺が話しかけるべき相手じゃない。止まってる人が居る場所と、話しかけられる人が居る場所は、この街だと別だった。

品川、俺は乗り換えでしか使ったことないっす。ホームからホームまでしか知らないやつです

あの駅、ホームだけ見てると本当に別の街だよな。改札出て五分歩くと、急に会社の飲み会の音がしてくる
で、21時。これが港南口の唯一の窓だった。デッキの下の飲み屋が並んでる一角から、一次会が終わった塊がぞろぞろ出てくる。出てきてすぐ帰るんじゃなくて、店の前で数分止まるんだわ。「どうする、もう一軒行く?」「明日早いんだよな」の相談タイム。この数分だけ、街の中で人の足が止まってる。
塊は四人から六人が多くて、たまに二人組が混ざる。二人組のときだけ、こっちの声が届く余地がある。五人に囲まれた状態で一人に話しかけると、五人が同時に振り向いて、全員に微笑まれながら喋ることになる。これは何回やっても慣れなかった。
高架寄りの立ち飲みが、この街で一番喋れる場所だった
港南口をうろうろして最終的に俺が落ち着いたのは、線路寄りにある立ち飲みの並び。外にカウンターが張り出してて、屋根はあるけど壁がない、みたいな作りの店が何軒かある。ここは客同士の距離が最初から近いんで、隣と喋ることのハードルが路上より圧倒的に低い。
電車が通るたびに会話が一瞬途切れるのも、慣れると使える。途切れたあとに喋り出す側になれば、それが自然に二言目になるから。この感じは、前に神田のガード下を19時から23時まで歩いた夜で味わったやつとほとんど同じだった。あっちの匂いは焼き鳥の煙で、こっちは駅ビルの空調の風。それ以外はけっこう似てる。
高輪口に回ると、急に音が減る
同じ改札を反対側に出る。西側の高輪口。ここで一回、俺は普通に驚いた。港南口の音がぱたっと消えるんだわ。
出てすぐバスとタクシーのロータリーがあって、その向こうが片側何車線もある道路。歩道は広いのに、歩いてる人が少ない。車の音のほうが人の声より大きい。坂の上のほうにホテルが何軒かあって、そっち方面から降りてくる人がぽつぽつ居るけど、みんな目的地が決まってる足の速さで歩いてる。
歩いてる人の種類も違った。港南口が会社帰りの塊なら、高輪口はキャリーケースを引いてる人と、家族連れと、あきらかに待ち合わせしてる人。要するに、この街で飲んでる人じゃなくて、この街を経由してる人が多い。声をかける相手として見ると、圧倒的に難しい。

高輪口って、坂の上にホテルがどーんとあるとこっすよね

そう、あれ。あの前の道、22時に歩いたら人が三人しか居なかった。俺を入れて三人ね
俺が高輪口で唯一いいなと思ったのは、22時半以降の空気。港南口が駅方向の一方通行になって殺伐としてくる時間に、こっち側はまだ静かなまま。飲み終わったあとに移動して、少し落ち着いて喋るには悪くない。ただしそれは相手が既に居る場合の話で、ゼロから探しに行く場所ではなかった。
山手線で二駅動くだけで、路上の様子は全然違う。五反田の夜を流したときは23時を回ってからのほうが人が出てきて、深夜に向かって濃くなる感じだった。品川はその真逆で、23時台にはもう街が畳まれてる。
何回声をかけて、どこで滑ったか
何日か通ううちに、改札を出た瞬間に「今日はどっち側に行くか」を決めるようになった。決めるのに使ってた頭の中のメモが、だいたいこれ。
| 時間帯 | 港南口の様子 | 高輪口の様子 | 俺の動き方 |
|---|---|---|---|
| 18:30〜19:30 | 退勤の川。全員が改札に向かう | バスとタクシーの列。歩行者は少ない | 歩くだけ。混んでる店を覚える |
| 19:30〜21:00 | 外が空っぽ。全員が店の中 | ほぼ無人。車の音のほうが大きい | 外は諦めて立ち飲みに入る |
| 21:00〜22:30 | 一次会明けの塊が店の前で数分止まる | 坂の上から降りてくる人がぽつぽつ | 港南口の飲み屋の並びを往復 |
| 22:30〜23:30 | 駅方向の一方通行になる | タクシー待ちの列だけ伸びる。23時前で12人並んでた | 声はかけない。店じまいを見てる |
金曜だけは別枠で、塊がでかいぶん店の前の相談が長い。逆に雨の日は21時台の窓ごと消える。傘をさして立ち話する人は居ないんだわ。俺が傘を忘れた日はまさにそれで、22時前に降り出して、五分で路上から人が消えた。デッキの下で雨宿りしながら、玄関での自分の判断を思い返してた。
声をかけた数は、全部の日を足して十いくつ。港南口の店の前と、立ち飲みの並びが大半。第一声は店の話から入ることが多かった。「この辺で二軒目に座れるとこ知りませんか」「そこの立ち飲み、いま並んでました?」みたいなやつ。品川は店の情報が実際に役に立つ街だし、聞かれた側も答えやすい。
反応で一番多かったのは、笑顔で首を振るやつ。嫌な感じは全然なくて、ただ足が止まらない。次に多いのが「すみません、次の店決まってて」。品川で断られるときって、ほぼこの二種類だった。渋谷みたいに警戒してる目で見られることがほとんどないかわりに、こっちの話が始まる前にもう会話が終わってる。仕事帰りに予定が入ってる人の断り方は速い。
一回だけ、二人組が本当に立ち止まってくれた日があった。店の前で三軒目をどこにするか揉めてて、俺が「その相談、めちゃくちゃ長引いてますね」と言ったら片方が笑って「もう二十分やってます」と返してくれた。そこから三分くらい喋ったんだけど、結局その二十分の相談が決着して、二人はそのまま決まった店に消えた。悪くない時間だったし、あれ以上どうこうしようとも思わなかった。
で、それが裏目に出た日がある。立ち飲みの外で二人組に「この先で座れる店ってあります?」と聞いたら、片方がすぐスマホの地図を開いて、三軒教えてくれた。しかもかなり丁寧に。「ここは予約なくても入れます」「こっちは奥に座敷あります」まで説明してくれて、俺がお礼を言ったら、二人揃って「じゃ、頑張ってください」と言って去っていった。完全に道に迷ってる人として処理されてた。まあ、そう聞いたのは俺なんだけど。あの二人には今でも感謝してる。店の情報は正しかったし。
あとひとつ、俺の線引きも書いとく。俺は勤務中の人には声をかけない。店員さんも、駅前で案内してる人もそう。仕事の時間に私語で割り込むのは俺の中でなしになってる。声をかけたあとも同じで、相手が乗ってこないなら俺は引く。会話が噛み合ってない感じがしたらそこで終わり。追いかけたところで、その先で自分が嫌になるだけなんで。
路上が動かない19時台は、外で粘っても本当に何も起きない。その日は諦めて立ち飲みのカウンターの端に入って、片手でアプリを開いてた。一時間で使う金は二杯ぶんの900円ちょいで、外に突っ立ってるよりは安い。品川は待ち合わせに使える店の数だけはやたら多いんで、時間さえ先に決まってればあとはどうにでもなる。
- 会員数が多いから、都心はもちろん地方でも相手を探しやすいのが強み
- 掲示板とつぶやき機能があって、その日のノリで動ける子を見つけやすい
- 登録は無料。まず中を眺めて、雰囲気を掴んでから動けばOK
18歳未満(高校生を含む)はご利用いただけません。登録には年齢確認が必要です。本コンテンツには広告(PR)が含まれます。
足元に花束を置いて飲んでる人がいた
木曜の21時過ぎ。線路寄りの立ち飲み、外のカウンター。俺の右隣に女の人が一人で立ってて、足元に紙袋が置いてあった。その紙袋がやたらでかくて、口から花束の茎が飛び出してる。ハイボールを飲んでて、たまにその紙袋を足で寄せてた。
あまりにも視界の端で主張してくるんで、それを言った。

その花、さっきからずっと視界の端で光ってるんですけど
あー…(笑)持って帰れって言われて


誰かの誕生日ですか
送別会です。余ったやつ押し付けられました

送別会の余りの花束を持って立ち飲みしてる人、初めて見た。これは幹事だなと思って言ったら、当たった。

幹事やらされた人でしょ
なんで分かるんですか(笑)


花束って幹事しか持って帰らないんで
たしかに(笑)

そこで笑ったんだけど、この人、笑うときに口を手で隠さない。ハの字に口が開いて、そのまま声が出る。立ち飲みだと荷物と飲み物で両手が塞がってるからそうなるのかと思ったけど、そのあと一時間ずっとそうだった。
名前はナナ、二十六。会社は港南口側で、駅から歩いて数分らしい。仕事は総務。

送別会って、総務が全部やるもんなんですか
うちは全部です。会場と、色紙と、集金と


集金つらそう
一人まだ払ってないんですけど、言えてないです(笑)


言えばいいのに
言えたら苦労してないんですよ〜

色紙の話が地味に面白かった。回すのに二週間かかる、途中で誰かの机の下に沈む、最後に部長のスペースを空けておかないと怒られる。全部聞いたことないのに、聞いたら全部そうだろうなと思う話だった。

部長のスペースって、みんな勝手に空けるもんじゃないんですか
空けないんですよ〜。右上、みんな取り合うんで


右上が人気なんだ
書きやすいらしいです。知らんけど(笑)

会議室の鍵の話も出た。総務が全部の鍵を管理してるんだけど、返さない人が一定数いて、月末に一人ずつ回収に行くらしい。その回収がまた気まずいと。集金といい鍵といい、この人の仕事は人から何かを取り返す話ばっかりだった。

この花、なんて名前の花なんですか
知らないです


幹事なのに
発注しただけなんで(笑)予算だけ決めました

会社が近いって最高じゃないですか、と言ったら「近すぎるのが罪なんですよ」と返ってきた。歩いて数分だから、飲もうと思えばいつでも飲める。だから週に二回は来てるらしい。

週二って、ほぼ毎日じゃないですか
ちがいます(笑)毎日は五日です


計算が正確だ
そこだけは総務なので

俺が品川を何日か歩いてる話をしたら、素で不思議がられた。この街で遊ぶ人っているんですか、って。会社の人と飲んで帰るだけの街だと思ってました、と。それはこっちの実感とも合ってて、二人でしばらく「なんであんなに人が居るのに誰も遊んでないのか」の話をしてた。答えは出てない。
みんな終電の時間で動いてるからじゃないですか


確かに、22時半くらいから全員の歩く速度が上がる
それ分かります。私も上がります


今日は上がってないですけどね
あ(笑)

面白かったのはここで、この人、22時をまわっても一度も時間を見なかった。スマホもカウンターに伏せたまま。俺のほうが先に気になって聞いた。

終電、大丈夫なんですか
まだ全然。ていうか今何時ですか


二十二時四十分
うわ

そこで一気に現実に戻った顔をして、でも慌てずに残りのハイボールを飲んでた。会計して、二人で改札のほうに歩いた。花束の紙袋は俺が持った。持ってみたら思ったより重くて、なんでこれを立ち飲みの足元に置いといたのか納得した。
歩きながら連絡先を交換して、俺が「次は座れる店にしましょう」と言ったら返しが早かった。
座れる店、こっち側にちゃんとありますよ


今の、誘われてます?
案内です(笑)


花束持って立ち飲みしてる人、俺も一回見てみたいっす

けっこう目立つよ。紙袋から茎がにゅっと出てるんで、遠くからでも分かる
改札の前で別れて、この日はそれで終わり。一時間ちょっと喋って、花束を運んで、解散だわ。
で、また港南口から歩くのか
翌日の昼、俺のほうから「あの花、結局なんて名前だったんですか」と送った。返ってきたのは会社のデスクに置かれた例の花束の写真で、瓶に挿してある。名前も一緒に書いてあったけど、俺はもう忘れた。すまん。
そのあと何回かやり取りして、二週間後に「案内」してもらった。港南口の、ビルの中の座れる店。ちゃんと予約が取ってあって、席に着いてから「今日は集金の人からも回収しました」と報告された。二週間かかってる。二軒目は高輪口側の静かなほうに移動して、店を出たのは日付が変わる少し前。タクシーの列に並ぶナナを見送って、俺は歩いて駅に戻った。
連絡はそのあと、だんだん間が空いていった。最後に来たのが色紙の続報で、机の下に沈んだまままだ出てきてないらしい、という一行。俺も気の利いた返しが浮かばないまま置いといて、それきりになってる。
俺が品川の19時台に外で粘らなくなったのは、この一連のあとから。あの日みたいに、隣に誰か立ってる場所で待ってたほうが早い。そこで片手に持ってるのがPCMAXで、19時台の一時間に返ってくるのはだいたい一件。使い勝手を丸ごと書いたのは前の記事のほう。グラスがあると片手しか空かないから、俺の返信はいつも一行で終わる。
- 会員数が多いから、都心はもちろん地方でも相手を探しやすいのが強み
- 掲示板とつぶやき機能があって、その日のノリで動ける子を見つけやすい
- 登録は無料。まず中を眺めて、雰囲気を掴んでから動けばOK
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先週も港南口に居た。21時をすぎたのに店の前に塊が出てこなくて、デッキの上から下の通りをずっと見てた。風が強い日で、街路樹の葉っぱの音のほうが人の声より大きかった。手すりが冷たくて、指先だけ感覚が遠かった。傘は今回も持ってきてなかった。降らなかったからセーフだったけど、俺はあと何回、この駅で同じ手ぶらを繰り返すつもりだったんだろう。
東京の次の動きまで見る。
声をかけた後、どの街でどう流すか。場所選びと飲みの入口に近い記事を並べています。


