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【ワクワクメール体験談】銭湯好きの27歳と、湯上がりの瓶牛乳

【ワクワクメール体験談】銭湯好きの27歳と、湯上がりの瓶牛乳
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APP REPORT / 現場

ワクワクメール体験談銭湯好きの27歳と、湯上がりの瓶牛乳

ワクワクメールの趣味欄に「銭湯」とだけ書いてた介護職のチヅル(27)と、待ち合わせは北千住の銭湯の風呂上がり。男湯と女湯で別々に入って、番台前で合流して瓶牛乳。すっぴんで平然と現れた27歳と大衆酒場で一杯やった、気取りゼロの土曜の話。

ワクワクメール体験談現場読了 14分
01 APP会う前提で入る02 MEET現場で合流03 VIBE空気を作る04 AFTER次の場所へ
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TYPEチヅル 27歳
介護職
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藍色の暖簾が、路地のつきあたりでゆっくり揺れてた。白抜きで「ゆ」。北千住の駅から歩いて八分、大通りから一本裏に入って、そのまた奥。くぐると年季の入った木の下足箱がずらっと並んでて、俺は空いてる箱に靴を突っ込んで、木札を抜いた。カタン、って軽い音がした。この音、何回聞いてもいい。

で、この木札を抜いた時点で、今日のデートはもう始まってる。始まってるんだけど、相手はまだどこにもいない。というか、俺はその相手とまだ一度も会ったことがない。顔も知らない。今日の待ち合わせ場所が、この銭湯の「風呂上がり」だから。我ながら書いてて意味が分からん。順番に説明する。

Scene 01

趣味欄に「銭湯」とだけ書いてあった

時間を巻き戻す。きっかけはワクワクメールのプロフ検索で、寝る前に都内で絞ってだらだら流し見してたら、趣味欄に「銭湯」とだけ書いてる27歳がいた。映画とかカフェとか旅行とかを三つ四つ並べるのが普通の欄に、銭湯。一語。カフェ巡りと並べて書く「銭湯」じゃなくて、単独の「銭湯」。潔すぎて、スクロールを戻して二度見した。

写真は横顔が一枚だけ。名前はチヅルで、仕事は介護職。自己紹介文も二行しかなくて、休みの日は風呂に入ります、で終わってた。この情報量の少なさが逆に気になって、最初のメールは自己紹介でも褒めでもなく、銭湯の質問から入った。

アキ
アキ

趣味欄の銭湯って、スーパー銭湯じゃなくて番台がある方の銭湯ですか

チヅル

番台の方です(笑)そこ聞いてくる人、初めてなんだけど

チヅル
アキ
アキ

俺も月イチじゃきかないくらい行くんで。熱い湯とぬるい湯、どっち派です?

チヅル

熱い方。44度くらいあると当たりって思う(笑)

チヅル

44度で当たり。この返しで、あ、これ本物の人だわって分かった。ぬるめの炭酸泉でととのう系じゃなくて、44度。そこからの話も早かった。黄色い桶の話、コーヒー牛乳とフルーツ牛乳のどっち問題、露天のない銭湯の湯気のこもり方。投げた話題が全部、こっちの想定より半歩深いところで返ってくる。

アプリのやり取りって、三往復目あたりで失速するのが大半なんだわ。仕事なにしてるんですか、休みの日なにしてるんですか、で燃料が切れる。それが銭湯一本で、会う日が決まるまで一回も途切れなかった。趣味欄の一語が本物だと、話ってこんなに転がるんだなと、返信を打ちながらちょっと感動してた。

チヅル

銭湯の話でこんなに保った人、いなかったよ。周り、サウナの人ばっかで

チヅル
アキ
アキ

わかる。サウナ人口に対して銭湯人口、少なすぎるんだよな

ワクワクメール自体の使い勝手とか料金の話は、ワクワクメールのレビュー回に分けて書いてあるからここでは省く。あと俺は今回プロフ検索一本で見つけたけど、掲示板から探す道もあって、そっちは掲示板の使い方の回にまとめてある。趣味の一語で引っかかる出会いは、プロフ検索側の醍醐味だと思う。

やり取りは、チヅルの夜勤のリズムに合わせて二日に一回どかっと返ってくる感じで、会う話がまとまる頃には、最初のメールから一週間ちょっと経ってた。

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Scene 02

「先にお風呂入ってから飲むのはどう?」

会おうって流れになったとき、普通なら駅前の改札とかカフェを指定するじゃん。俺もそのつもりで、場所どのへんが出やすいですかって送った。チヅルの家と俺の家は路線が違うんだけど、どっちからも出やすいのが北千住だった。ワクワクメールで近場の子と会うのはご近所の子と会った回以来で、移動が軽いと会うまでの腰も軽くなるのは今回も同じだった。

で、店を探し始めた俺のところに、チヅルからこう来た。

チヅル

あのさ、変な提案していい?(笑)

チヅル
アキ
アキ

どうぞ

チヅル

北千住、いい銭湯あるの。先にお風呂入ってから飲むのはどう?

チヅル
アキ
アキ

え、待ち合わせが銭湯ってこと?

チヅル

そう。男湯と女湯で別々に入って、上がったら合流(笑)変かな

チヅル
アキ
アキ

変。笑 変だけど、ちょっと天才かもしれない

送信してから、一人でしばらく笑ってた。初対面の待ち合わせが「風呂上がり」って何なんだよ。でも考えれば考えるほど理にかなってる。風呂に入っていい気分になった状態から始まる初対面、悪くなりようがない。

チヅル

じゃあ土曜の夕方ね。五時に入って、六時に番台の前で

チヅル
アキ
アキ

了解。のぼせないようにだけ気をつけるわ

集合時間じゃなくて「入る時間」と「上がる時間」を決める待ち合わせ、人生で初めて組んだ。

当日の昼、何を着てくか一瞬考えて、すぐ気づいた。どうせ全部脱いで風呂に入るんだから、勝負服もクソもない。着替えとタオルをリュックに詰めるだけの初対面の準備、荷造りが銭湯のそれで、途中で一回笑った。

Scene 03

男湯側の四十分

そんで当日。土曜の夕方五時、冒頭の暖簾をくぐって、木札を抜いて、番台で550円を払って男湯へ。マイタオルは持参した。銭湯好きを名乗る以上、貸しタオルを借りるわけにはいかない。

脱衣所は扇風機が首を振ってて、常連っぽいじいさんが体重計に乗って唸ってた。浴場はカランが片側六つずつ、正面の壁にペンキ絵の富士山。湯船は二つあって、奥のやつに突き刺さった温度計が44を指してた。チヅルの言う「当たり」の温度が、ここにある。

アキ
アキ

あっつ。……いや、でもこれだわ。メールでずっとしてたのは、この熱さの話だわ

かけ湯を多めにして、足からゆっくり沈む。肩まで入って十秒でじわっと効いてくる。熱いというより、輪郭がはっきりする熱さ。土曜の夕方の男湯は空いてて、じいさん二人と俺だけ。たまにカポーン、と桶の音が響く。天井が高くて、湯気が上の方でゆっくり回ってる。カランの鏡がところどころ錆びてて、その錆まで含めていい銭湯だった。

隣のカランのじいさんが、俺が44度に一発で肩まで入ったのを見て、ほう、みたいな顔をした。何も言われてないけど、たぶん合格をもらった。こういう無言のやりとりがあるのも銭湯のいいところで──って、俺は今日、初対面のデート前なんだよな。忘れかけてた。

で、湯に浸かりながら気づいたんだけど、壁一枚向こうに、俺がまだ一度も会ったことのない今日の相手がいるわけよ。メールは9日ぶん重ねたのに顔は知らない人間と、同じ建物で同時に風呂に入ってる。この状況、冷静になると相当おかしい。

アキ
アキ

初対面より先に風呂が来る段取り、組んだの誰だよ。俺とチヅルだよ

普段の初対面って、店に入る前が緊張のピークじゃん。今日はそのピークの時間に湯船に浸かってるから、緊張の置き場がない。心臓はちょっと速いんだけど、それが湯のせいなのか初対面のせいなのか、もう自分でも区別がつかない。緊張が風呂と混ざって、どっちがどっちか分からないまま薄まってた。

水風呂がない銭湯だったから、水シャワーを頭から浴びて、もう一回44度に戻る。二往復したところで時計を見たら五時五十分。上がって、扇風機の前で一分突っ立って、20円のドライヤーで髪を乾かして、六時ちょうどに番台の前へ出た。

Scene 04

番台の前で、瓶牛乳

先に上がってたのはチヅルの方だった。冷蔵ケースの前に、濡れ髪をゴムで適当にまとめた子が立ってて、俺を見て「あ」って口が動いた。

すっぴんだった。まつげも肌も何も盛ってない、風呂上がりそのまんま。無地のTシャツにゆるいパンツで、荷物は俺と同じくタオルの入ってそうな布袋ひとつ。それで番台の前に平然と立ってる。初対面って普通、お互い一番盛った状態で来るもんじゃん。その真逆から始まってる。

正面から「はじめまして」をやる前に、頬がまだ湯上がりで赤いのがわかって、なんか先に安心した。向こうも俺の濡れた前髪を見て、同じ種類の安心をした顔をしてた。たぶんこれ、お互いの手の内を最初に全部見せ合ったのに近い。

チヅル

どうも(笑)これで、はじめまして、になるのか。変な感じ

チヅル
アキ
アキ

はじめまして。お互いもう風呂済んでるっていう。笑

チヅル

ね(笑)で、44度あった?

チヅル
アキ
アキ

あった。温度計が44で止まってた。当たりだわ

チヅル

でしょ(笑)

チヅル

チヅルが冷蔵ケースを指差して、牛乳どうする、と聞いてくる。瓶のやつ。フルーツ牛乳は売り切れてて、白いのとコーヒーの二択だった。

チヅル

私コーヒーの方。フルーツはいっつも売り切れてんの、ここ

チヅル
アキ
アキ

じゃあ俺は白いほうで。ここは出すわ。二本で280円だけど。笑

チヅル

風呂上がりの一本奢られたの初めて(笑)ありがと

チヅル

チヅルは腰に手を当てて飲むやつを、ボケとかじゃなく普通にやった。たぶん癖なんだと思う。半分くらい一気にいって、小さく「ぷはっ」て言った。27歳の初対面の「ぷはっ」、悪くなかった。俺も真似して一気にいったら、鼻の奥が冷たくなってむせた。

チヅル

弱っ(笑)

チヅル
アキ
アキ

風呂上がりの牛乳でむせた男、今日この街で俺だけだと思う

Scene 05

湯上がりのまま、大衆酒場へ

銭湯から歩いて三分の大衆酒場に入った。チヅルが前から気になってたけど一人だと入りづらかった、って言ってた店。赤ちょうちんに、中はコの字のカウンター。おしぼりより先に瓶ビールが来るタイプの店で、湯上がりの体に最初の一杯が染みていく感覚は、ちょっとずるかった。

チヅル

お風呂のあとのこれのために生きてるとこある(笑)

チヅル
アキ
アキ

この段取り考えた人、偉い。さっきから三回思ってる

仕事の話になって、チヅルは介護の夜勤明けに朝からやってる銭湯へ直行するのが習慣らしい。夜勤は体力も気力も削れる仕事で、家に帰ってそのまま寝ると疲れが翌日に残る。だから間に風呂を一枚はさむ。趣味欄の「銭湯」一語の裏には、そういう生活があった。夜勤明けの朝風呂の良さを語る27歳、目の輝きが今日イチだった。

チヅル

夜勤明けの朝イチのお風呂。あれはご褒美っていうか、もう薬(笑)

チヅル
アキ
アキ

労働のあとの風呂は効き方が違うよな

チヅル

そう。しかも朝からやってる銭湯って、お客さん全員戦友みたいな顔してるの(笑)

チヅル

会話が途切れても、ぜんぜん気まずくならなかった。お互い髪が半乾きで、すっぴんと風呂上がりの男の組み合わせには、盛る余地が最初から残ってない。かっこつける工程を風呂が先に全部溶かしてる。気取りゼロで始まる初対面がこんなに楽なのか、というのがこの日いちばんの発見だった。

煮込みと冷やしトマトと瓶ビール二本。途中からチヅルはレモンサワーに移って、俺は緑茶ハイ。冷やしトマトに何をかけるかで軽くもめた。

チヅル

え、待って。トマトに砂糖かける家の人?

チヅル
アキ
アキ

かけない。塩と、なんならマヨ。

チヅル

マヨはだめ(笑)トマトに対する敬意がない

チヅル

風呂には敬意の概念があんのにマヨには厳しいのな、って返したら、当たり前じゃんって真顔で言われた。カウンターの端のテレビは音の小さい歌番組で、じいさんたちが懐メロのたびに小声で歌詞を確かめ合ってる。俺の仕事の話も一応聞かれたけど、二分で銭湯の話に戻った。正しい判断だと思う。二時間半くらい喋って、九時前に店を出た。

チヅル

今日たのしかった(笑)初対面の感じ、しなかったね

チヅル
アキ
アキ

風呂のせいだな。三年目くらいの空気出てたわ

駅まで歩いて、改札の前でLINEを交換して別れた。この日はそれだけ。それだけなんだけど、帰りの電車の窓に映る自分が、ずっと薄くにやけてた。

Scene 06

その後の話

次の日、チヅルから銭湯の暖簾の写真が一枚送られてきた。夜勤前に寄ったらしい別の街の暖簾。文面はなしで、写真だけ。俺も近所の銭湯の暖簾を撮って、写真だけで返した。以降、文章より暖簾の枚数の方が多いやり取りが続いて、二週間後の土曜、また同じ銭湯で「五時に入って、六時に番台前」をやった。二回目にして、もう様式ができあがってる。待ち合わせの文面が「五時湯」の三文字で通じるようになったの、地味に嬉しかった。

その二回目、フルーツ牛乳が売り切れてなかった。チヅルが冷蔵ケースの前で小さくガッツポーズしてた。

チヅル

いた!フルーツいた!(笑)

チヅル
アキ
アキ

よかったな。笑 じゃあ俺、今日はコーヒーもらうわ

ちなみに一回目のこの日、俺が使った金を全部書いとく。風呂550円、ドライヤー20円、瓶牛乳二本で280円、酒場は二人で4,380円のところチヅルが先に2,000円をカウンターに置いたので、残りの2,380円が俺。合計3,230円。番台の550円から始まった出会いとしては、上出来すぎる中身だった。

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念願のフルーツ牛乳を、チヅルはやっぱり腰に手を当てて飲んだ。俺のコーヒー牛乳は、今度はむせなかった。

チヅル

成長したじゃん(笑)

チヅル
アキ
アキ

二回目だからな。この番台の前では、俺もう常連だからな

飲み干して、番台の横のケースに二人ぶんの空瓶を戻す。カコン、カコン、と鳴った。

NEXT ROUTE

会った後の流れまで、次に読む。

アプリで会ったあとに失速しないように、連絡、待ち合わせ、次のデートへ繋がる記事を置いています。

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アキ
ナンパ歴10年ちょい。アプリ・ストナン・相席・遠征までなんでも行く30代。実際に行って出会って、どうなったかをそのまま書いてます。