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【陶芸教室の出会い】隣の轆轤の27歳と土をいじりながら縮まった話

【陶芸教室の出会い】隣の轆轤の27歳と土をいじりながら縮まった話
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NIGHT REPORT / 現場

隣の轆轤の27歳と土をいじりながら縮まった話

手びねりじゃなく轆轤を回したくて社会人向けの陶芸教室に通い始めたアキ。隣の轆轤の27歳・ヒナノは物静かで集中型。各自が黙々と土と格闘する場で、ふとこぼす一言が回をまたいで積み上がって、いつの間にか距離が縮んでた。料理教室の共同作業とは逆の「並んで一人ずつ没頭する」習い事の出会いを実況する。

陶芸教室の出会い現場読了 13分
01 ENTRY入口を作る02 PLACE現場で動く03 VIBE空気を読む04 NEXT次へ繋ぐ
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TYPEヒナノ 27歳
デザイン事務所勤務
PLACE現場
現場レポ
HOOK現場感を
そのまま読む

今日は街でも相席屋でもなく、社会人向けの陶芸教室で隣の轆轤になった子と、回を重ねるうちにいい感じになってた、って話。相手はヒナノ(27)、デザイン事務所勤め。物静かで、自分の世界をちゃんと持ってて、うまくいかないと黙って笑ってごまかすタイプの子だった。先に言っとくと、最初の三回くらいは会話ゼロ。お互い自分の土と格闘するので精一杯で、目も合ってなかった。笑

念のため断っとくと、俺はナンパ目的で陶芸教室に申し込んだわけじゃない。前に酒の席で「轆轤回したことある?」って聞かれて「ない」って答えたのが妙に悔しくて、一回ちゃんと土いじってみたかっただけ。出会い狙いで習い事をすすめる、みたいな煽りの話じゃない。ただ通ってみて、陶芸教室っていう場所は、料理教室みたいな共同作業とは逆の縮まり方をするってのを知った回。そこは正直に書いていく。

Scene 01

社会人の陶芸教室って、どんな感じで進むの

FIELD MEMO

陶芸教室の出会いの入口、現場での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。

俺が申し込んだのは、雑居ビルの三階にある小さな陶芸スタジオ。月二回・平日夜のコースで、仕事帰りに行ける時間帯。轆轤が六台くらい並んでて、初級は半年で湯呑みとか茶碗とか、一通り作れるようになる、みたいなやつ。一回が二時間ちょっと。男もちらほらいて、女ばっかりの場じゃない。「定年後の趣味の下見」みたいなおじさんから、俺みたいな三十路手前まで、客層はバラバラだった。

進め方が料理教室と決定的に違うのは、基本ぜんぶ一人作業ってとこ。先生が最初にその日の手順をデモするんだけど、そのあとは各自、自分の轆轤に座って、自分の土と向き合う。班とか共同作業とかは一切ない。隣に人はいるけど、やってることは完全に別。みんな黙々と土をこねて、土殺し(中心を出す作業)して、形を上げて、を一人で延々やってる。

コウ
コウ

え、全員バラバラに作業すんの? それ出会いとか無理くないっすか。みんな無言でしょ。

アキ
アキ

そう、無言。最初は俺もそう思った。料理教室は「それ取って」とかで勝手に喋れるけど、陶芸は喋るきっかけが全然ないんだよ。

コウ
コウ

じゃあどうやって縮まるんすか。

アキ
アキ

それがさ。黙って隣で同じことやってると、たまにこぼれる一言が、妙に効いてくるんだわ。後で書く。

ここがこの場所のおもしろいとこで、陶芸は「並んで、それぞれ一人で没頭する」。会話で距離を詰める場所じゃない。むしろ二時間、ほぼ無言。土に集中してるから、隣の人としゃべる余裕なんてない。最初の数回は、俺も自分の轆轤の上で土がぐにゃぐにゃに歪むのを必死で直してて、ヒナノがどんな子かなんて見る暇もなかった。

でも通ってるうちに気づいたんだけど、この「無言で並んでる時間」が、後からじわじわ効いてくる。毎回同じ時間に来て、隣同士で、同じように失敗して、同じように土と格闘してる。会話はないけど、相手の存在には毎回ちゃんと触れてる。それが二週間ごとに積み重なっていく。喋らないのに、なんとなく顔なじみになっていく、っていう不思議な縮まり方をする場所だった。

Scene 02

隣の轆轤がヒナノ。物静かで、集中してると話しかけられない

ヒナノを認識したのは、二回目あたり。たまたま隣の轆轤に座ってて、横目で見たら、この人だけ妙に集中してた。俺らが歪んだ土に「うわ」「あー」って声出してる横で、ヒナノだけ完全に無音。眉間にちょっと皺寄せて、土をじーっと見て、指先だけ動かしてる。第一印象は「あ、なんか自分の世界に入ってる人だな」だった。

聞いたわけじゃないけど、後で分かったのは、ヒナノがデザイン事務所勤めで、普段から手で物を作るのが好きなタイプってこと。だから陶芸も、出会いとか気分転換とかじゃなくて、純粋に「土で形を作るのが楽しいから来てる」感じだった。喋りに来てるんじゃなくて、作りに来てる人。だから最初、俺は完全に空気だった。笑 話しかける隙が、物理的にない。

アキ
アキ

(心の声)この人、二時間で一回もこっち見てなくない…?

ヒナノ

……(土に集中、無言)

ヒナノ
アキ
アキ

(あ、俺の土また歪んだ。それどころじゃなかった)

最初に一言だけ交わしたのは、たしか三回目。俺の轆轤が回りすぎて、上げてた土が遠心力で「ベチャ」って外側に倒れた瞬間。完全に終わった土を前に俺が固まってたら、ヒナノが横からチラッと見て、

ヒナノ

あー…それ、回しすぎですね。

ヒナノ
アキ
アキ

え、わかる? 俺いま何が起きたかも分かってない。

ヒナノ

水も多いかも。…たぶん。

ヒナノ

これだけ。「たぶん」って付け足して、すぐまた自分の土に戻っていった。会話を続ける気はなさそうだった。でもこの一言が、俺の中ではけっこうデカくて。ずっと無言で隣にいた人が、初めてこっち見て、一言くれた。たったそれだけなのに、なんか壁が一枚めくれた感じがした。陶芸は会話の総量が少ないぶん、一個の一言の重みが、街コンの百倍くらいある。

Scene 03

失敗を笑ってごまかすやつ。轆轤の前だと素が出る

回を重ねるうちに気づいたんだけど、ヒナノはうまくいかないと、黙って笑ってごまかすクセがあった。普段あんなに集中して涼しい顔で作ってるのに、自分の作品がぐにゃっと潰れた瞬間だけ、こっそり「……ふふ」って笑う。声には出さない。でも肩が揺れてるからバレてる。それを横目で見つけたとき、なんか急に親近感が湧いた。

ある回でね、ヒナノが珍しく集中切らして、上げてた花瓶みたいなやつの口を、最後の最後で指で押し潰したことがあって。シーンとした教室で、ヒナノが潰れた土を見て、肩を震わせて笑ってた。俺、思わず、

アキ
アキ

いま笑ったでしょ。自分の潰したやつで。

ヒナノ

……笑ってないです。

ヒナノ
アキ
アキ

肩めっちゃ揺れてたって。

ヒナノ

……あんなに上げたのに(笑) 最後ですよ、最後。

ヒナノ

この「最後ですよ、最後」で、ヒナノが初めて声出して笑った。それまで無音の集中マシンみたいだった人が、自分の失敗には笑える人なんだって分かって、一気に距離が縮んだ気がした。物静かなのは無愛想なんじゃなくて、ただ作業に入り込んでるだけ。そこから抜けた瞬間のヒナノは、ちゃんと砕けるし、ちょっと自虐っぽく笑う。そのギャップがいいなと思った。

それからは、お互いの失敗にだけ、ぽつぽつ反応するようになった。俺の土がまた倒れたら「あー」って横でこぼすし、ヒナノの形が歪んだら俺が「それ、傾いてない?」って言う。会話っていうほどのものじゃない。お互い自分の轆轤に集中したまま、横を見もせずに一言だけ投げる。それでも、毎回それが少しずつ増えていった。最初の三回が完全な無音だったぶん、一言交わせる相手になったってだけで、教室に行くのがちょっと楽しみになってたのは確かだった。

料理教室は「一緒に作る」共同作業で、横の役割分担の言葉が勝手に飛び交って縮まる。陶芸は逆で、各自が一人で没頭する並走。同じ場にいるけどやってることは別、っていう距離感が、むしろ気楽だった。沈黙が当たり前の場所だから、無言が気まずくない。喋らなきゃっていうプレッシャーがゼロ。で、だからこそ、たまに交わす一言が、街コンの「ご趣味は?」みたいな探りとは全然ちがう温度で入ってくる。誰かと打ち解けるのに、喋りの量はそんなにいらないんだなって、この場所で初めて思った。口で押すタイプじゃない俺には、これがけっこう合ってた。

Scene 04

窯出しの日。自分の作ったものを、隣同士で見せ合う

陶芸のいいところって、作った土がすぐ完成しないとこなんだよ。轆轤で形を作っても、そのあと乾かして、素焼きして、釉薬かけて、本焼きして、ってのに何週間もかかる。だから自分が前に作ったやつが、回をまたいで「焼き上がって戻ってくる」。この窯出しの日が、毎回ちょっとしたイベントになる。

で、この窯出しが、地味に距離を縮める。なんでかっていうと、自分の作品を手に取った瞬間、みんな素のリアクションが出るから。思ったより歪んでたり、釉薬の色が想像と違ったり。普段無言で作業してる人も、このときばかりは「うわ、ちっちゃ」とか声が出る。ヒナノも、自分の湯呑みが想像より小さく縮んで焼き上がったとき、

ヒナノ

……えっ、こんな縮む? おちょこじゃん。

ヒナノ
アキ
アキ

それ湯呑みだったの? 完全に日本酒のやつだよ。

ヒナノ

湯呑みのつもりだったんですけど(笑)

ヒナノ
アキ
アキ

俺のなんか、底に穴あいてたからね。お椀として終わってる。

ヒナノ

穴は…さすがに(笑)

ヒナノ

自分のポンコツ作品を見せ合って笑う、っていうのが、窯出しの日だけ自然に発生する。普段の無言の作業とのギャップで、このときの会話はやたら弾む。お互いの「うまくいかなかった結果物」が机に並んでるから、変な見栄がいらない。デザイン事務所で普段ちゃんとした物を作ってるヒナノが、おちょこサイズの湯呑みに「えっ」ってなってるのが、なんかかわいかった。

連絡先を聞いたのも、この窯出しの流れがあったから。ヒナノが釉薬の話を妙に詳しくしてて、俺が「次それどうやるの」って食いついたら、けっこう丁寧に教えてくれて。で、帰り際、

アキ
アキ

さっきの釉薬の話さ、俺ぜったい次回また分からなくなるから、連絡先教えてくんない? 困ったとき聞きたい。

ヒナノ

えー…(笑) 私もそんな詳しくないですよ。

ヒナノ
アキ
アキ

穴あけるやつよりは詳しいでしょ。

ヒナノ

それは…まあ(笑) いいですけど。

ヒナノ

「いいですけど」で交換成立。釉薬を口実にしたのが良かったんだと思う。いきなり「飲みに行こう」じゃなくて、陶芸っていう共通の文脈があるから、ヒナノも構えずに教えてくれた。会う頻度の低い習い事だけど、こういう「自然な口実」が窯出しのたびに転がってるのが、地味に強い。

Scene 05

教室の外で、一回飯。轆轤の話で二時間もった

連絡先を交換してからは、しばらくは陶芸の相談がメインだった。「土殺しのコツ」とか「釉薬のムラの直し方」とか、しょうもない質問にヒナノが意外と丁寧に返してくれる。物静かに見えて、文字だと案外よく喋るタイプだった。で、何回かやり取りするうちに、自然に「じゃあ今度、教室じゃない普通の店で飯でも」ってなった。教室の外で会うのは、これが初めて。

待ち合わせに来たヒナノは、エプロンと土まみれの作業着しか見てなかったから、ちょっと印象が違った。私服はシンプルで、でもデザイン事務所っぽい、変なとこにこだわりがある感じ。気合い入れすぎてもなくて、普段の延長みたいな雰囲気だった。それがまた、轆轤の前の集中してるヒナノとちゃんと地続きで、いいなと思った。

アキ
アキ

土ついてないヒナノ、初めて見た。なんか新鮮。

ヒナノ

それ、私もちょっと思ってました(笑) アキさん、轆轤の前だともっと焦ってるイメージ。

ヒナノ
アキ
アキ

焦ってないって。あれは集中してる顔。

ヒナノ

毎回なんか潰してるのに?(笑)

ヒナノ

飯食いながら、教室では無言でできなかった話を、ぽつぽつした。仕事のこと、デザインの納期がきつい話、休みの日に何作ってるかって話。ヒナノは普段は物静かなのに、自分の好きなこと——手を動かして何か作る話——になると、ちゃんと熱が入る。「集中すると周り見えなくなって、気づいたら閉店時間まで轆轤回してることある」って笑ってて、その芯のある感じが、回を重ねて横で見てきた印象とぴったり重なった。物静かなんじゃなくて、自分の世界が深いだけなんだなって。

二軒目で軽くもう一杯、ってなったあたりで、距離はだいぶ近くなってた。教室で何回も隣に座って、同じように失敗して、たまに一言交わして、ってのを積み上げてきたぶん、もう初対面の探り合いみたいな緊張は全然なくて。気づいたら、自然にいい雰囲気になってた。ここから先は、いつも通り書かない。ちゃんといい関係になった、とだけ。

コウ
コウ

いや、無言の教室からよくそこまで持っていきましたね…。

アキ
アキ

無言だからこそ、たまの一言が積もるんだって。一発で決めにいく場所じゃないし、俺はそれが性に合ってた。

Scene 06

その後。月二回の窯だより、間が空く分は別で回してた

ヒナノとは、その後も続いてる。教室は二人とも通ったままで、相変わらず隣の轆轤で、相変わらず俺はなんか潰して、ヒナノに横目で「また?」って顔をされてる。この前ヒナノが作ったマグカップが綺麗に焼き上がってきて、悔しいから俺も次は穴のあかないやつ作る、って張り合ってる。教室の外でも普通に会うようになって、休みの日に二人で別の陶芸イベント見に行ったりもした。デザイン事務所の納期前の愚痴とか、しょうもない話を、普通に言い合える距離になってる。

ヒナノとは、教室で会えない週もそのへんでしょうもない連絡を取り合うようになった。窯出しのたびにお互いのポンコツ作品を送り合っては笑ってる。とはいえ会えるのは月二回。だから普段の出会いはアプリでぼちぼち回しつつ、教室はこういう「黙ってても勝手に育つ場所」として通ってる、って感じだわ。

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ちなみに同じ習い事でも、場の性質で縮まり方が全然ちがう。共同作業でガンガン喋れる料理教室で同じ班になった子と会った回と読み比べると、陶芸の「並んで一人ずつ没頭する」静けさの違いがよく分かると思う。継続でゆっくり育てるって意味だと、前に書いた英会話の国際交流ミートアップで会った子の回も近い感触だった。逆に、一発勝負で二時間に全部かける単発の料理コンに行った回は、テンションが真逆だったから、合わせて読むと場の差が見えると思う。

俺はもともと、街でガンガン声かけるほうのナンパ師なんだけど、こういう「黙って隣で土こねてるうちに、いつの間にか縮まってた」みたいな出会いも、やってみたら案外悪くなかった。ヒナノとどうなるかはまだ分からんけど、少なくとも今は、二週間後にまた隣の轆轤で会えるのが、ちょっと楽しみではある。それくらいの距離で、いいかなと思ってる。

NEXT ROUTE

この流れの次に読む記事。

読み終わったあとに動きやすいように、連絡、街での流し方、次の場づくりに近い記事を置いています。

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ABOUT ME
アキ
ナンパ歴10年ちょい。アプリ・ストナン・相席・遠征までなんでも行く30代。実際に行って出会って、どうなったかをそのまま書いてます。