大阪の夜、トゥナイト機能で会えた27歳
大阪のホテルで「部屋の用意がまだ」と放り出された夕方、ディースリー(旧Dine)のトゥナイト機能を初めて使った。マッチから店の予約までコーヒー一杯ぶん、心斎橋のセレクトショップ店員イズミ(27)と19時半に乾杯。笑うと関西弁に戻る27歳との、段取りゼロの夜。
心斎橋のセレクトショップ店員PLACE大阪
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難波のホテルのフロントで、「申し訳ございません、お部屋のご用意がまだ整っておりませんで」と深々と頭を下げられた。設備の不具合だとかで、部屋に入れるのは早くて夜の9時になるという。チェックインの列にしばらく並んだ結果がこれで、キャリーだけカウンターの奥に消えていって、俺は夕方の大阪に手ぶらで放り出された。
今回はその夜の話。ディースリー(旧Dine)に、急に空いた「今夜」をそのまま埋めにいく機能があって——トゥナイトってやつ——それを大阪で初めて使ったら、心斎橋のセレクトショップで働くイズミ(27)と会えた。で、これが結果的に、ここ最近でいちばんいい夜になった。部屋に入れなかったおかげ、って言うのも変な話なんだけど。
荷物だけ預けて、夕方の心斎橋に放り出された
ディースリー体験談の入口、大阪での空気、会った後の動きまで。場面ごとの温度を拾いながら、アキの現場感をそのまま読む記事です。
フロントのお姉さんがほんとに申し訳なさそうで、こっちが恐縮するレベルだったから、怒る気にはなれなかった。問題は時間のほう。夜9時まで4時間ちょい、知らない街、宿は理論上あるけど入れない、予定はゼロ。
とりあえず心斎橋筋をぶらぶら歩いた。アーケードを抜けてアメ村のほうに折れて、三角公園の前を通って、堀江まで行って戻ってくる。大阪の夜の道は前に一晩歩き回ってまとめた回があるくらいで、土地勘だけは妙にある。ただ、この日は路上で声をかける気分にはなれなかった。チェックインでケチがついた日って、テンションの初速が出ないんだよな。
道頓堀まで下りて、戎橋の上で自撮り棒の間に挟まれて、川沿いのベンチにしばらく座った。グリコの看板が点く前の、空がまだ明るい時間の川って、妙に手持ち無沙汰になる。周りを見たら、一人でぼーっと川を見てる客がぽつぽついて、だいたい俺と同じ顔をしてた。腹は減ってきてるのに、一人で店に入る決心もつかない、あの顔。

宿なし・予定なし・土地勘だけある男、心斎橋筋を二往復目。何してんだ俺。

ホテル入れないって、実際あるんすね…。俺なら暗くなるまでロビーの隅で膝抱えてますわ

それも考えたけど、ロビーが激混みだったんだわ。団体さんとスーツケースの海。あれなら街に追い出されたほうがマシ。
で、御堂筋沿いのコーヒー屋に避難して、窓際の席でスマホを出した。ここでディースリーを開いたのが、あとから思えばこの日いちばんの正解だった。
ディースリー(旧Dine)のトゥナイト、大阪で開いた理由
ディースリーは、前はDine(ダイン)って名前だったアプリ。俺は東京で何回か使ってて、中身はデート特化——マッチしてからメッセをだらだら重ねるんじゃなくて、店を決めて会うとこまで一気に進む設計。料金とか基本の使い勝手のほうは、帰りの新幹線で打ったレビューに書いた。
で、トゥナイト。「今夜会える相手を探す」ための機能で、俺が使った時はこう動いた。今夜空いてる人だけが並ぶ画面があって、そこに自分も手を挙げて、お互いいいねになればその日のうちに会う前提で話が進む。仕様の細かいところはアップデートで変わるかもしれないから断定はしないけど、少なくともこの夏の大阪では、こう動いてた。
対応エリアは、俺が見た時点では東京・大阪・福岡みたいな都市部が中心。つまり大阪はど真ん中で、むしろ東京より使い時なんじゃないかとすら思った。旅先で夜が丸ごと空くのって、だいたいこういう都市だし。
路上って選択肢も一瞬よぎった。よぎったけど、この腰の重さで無理して声をかけても、お互いの時間が事故るだけなんだよな。それより「今夜空いてる」を先にお互い表明し合ってる場所のほうが、この日の俺には合ってた。窓の外は帰宅ラッシュで、こっちはアイスコーヒー一杯で粘る宿なしの男。画面の中だけ、話が早い。

「今夜」って条件で人と会おうとしてる俺。どうかしてる、とは思った。でも部屋には入れない。

知らん街で、当日に決まるもんなんすか、それ…

俺も半信半疑で押してる。ダメなら串カツ食って部屋で寝るだけだし、失うものがない。
あとトゥナイトは、本人確認を済ませてないと使えない設計だった(少なくとも俺の画面では)。当然、18歳未満(高校生含む)はそもそも使えない。俺は東京で登録した時に済ませてあったから素通りだったけど、初めてだと「免許証出すの?」で一回手が止まると思う。何をどう出すのかは年齢確認の手順を一通りまとめた回があるんで、そっちで。
夕方の時点で、手を挙げてる子は思ってたよりいた。最初に申し込んだのは、南森町のカフェで働いてるって子。リクエストは既読のまま30分動かなくて、そのまま流れた。コーヒーをおかわりして、二人目に出てきたのがイズミだった。
マッチから店の予約まで、コーヒー一杯の間に終わった
イズミのプロフは、写真が2枚。店の鏡の前で撮ったっぽい全身と、川沿いの夕方の横顔。紹介文は短くて、「心斎橋で服を売ってます。今日は早く上がれた日。ワインをゆっくり飲みたい」。今日、って書いてあるのがトゥナイトの温度で、こっちも今日しかない身としては、条件が完全に噛み合ってる。
いいねを送って、数分でマッチした。
はじめまして。これって、ほんとに今日会う感じですよね…?私この機能初めてで(笑)


ほんとに今日です。こっちは東京から来たのに部屋に入れなくて、夜まで街に放り出されてる男です。
なんですかその状況(笑)。じゃあ19時半なら出られます

ここからがこのアプリの本領で、店を決める段取りを、アプリのほうが持ってくる。候補の店がいくつか並んで、選ぶと予約まわりの話が確定まで進む。俺がやったのは、心斎橋から歩ける範囲で、ワインが飲めて騒がしすぎない店を一個選んだだけ。「何時にどこで」の調整ラリーが発生しないの、何回使っても軽く感動する。
えっ、ここ、前から気になってたお店や…です(笑)


いま何か出かけたよね。
気のせいです。じゃあ19時半に(笑)

予約の確定あたりでクレジットカードの登録を求められるのは、直前キャンセルとかドタキャンを防ぐための設計だと思う。俺が使った時は、キャンセルの期限とルールが画面にはっきり出てた。約束に重みを持たせる作りは、当日ノリのトゥナイトだと特に効く。すっぽかされたら、俺の今夜が完全に終わるからな。ちなみに男は月額がかかって、俺のときは4,000円ちょい。この値段も、次に開いたら違ってるかもしれない。

店の候補まで出てくるんすか。もう幹事っすね、アプリが

そ。おかげで俺が今日やったこと、コーヒー飲みながらシャツのシワ気にしてただけ。
マッチから合流まで2時間を切ってると、緊張する暇がないのかと思いきや、普通にする。プロフと実物の印象が違ったらどうしよう、はお互い様だとして、こっちは「東京から来て宿に入れてない男」って自己紹介がもう済んでるのが、変に楽だった。今日の俺、これ以上カッコつけようがない。
時間までまだ1時間あったから、大丸の地下をひやかして、御堂筋のベンチで日が落ちるのを眺めてた。イズミと繋がってから、まだコーヒー二杯ぶんしか経ってない。知らない街で今夜の約束が一個あるだけで、同じベンチの座り心地がぜんぜん違う。
- マッチしてから会うまでが早い。日程調整も店の予約もアプリ側が段取りしてくれる
- 初回は公の飲食店で・本人確認必須の設計。ちゃんとしてる分、会う約束までが軽い
- 対応エリアは東京・大阪・福岡などの都市部(順次拡大中)。このへんで動くなら選択肢に入れていい
18歳未満(高校生を含む)はご利用いただけません。本コンテンツには広告(PR)が含まれます。
心斎橋で合流。イズミは標準語で現れた
19時半ちょうど、店の前。白シャツにワイドパンツで、小さいバッグを斜めがけした子が小走りに来て、俺の顔を見て足を止めた。写真より髪が短くて、写真より目が笑ってる。服屋の人って、服が高そうかどうかより「ちゃんと自分のサイズを着てる」感じで分かるんだよな。
アキさん……で、合ってますよね。よかった、人違いに声かけるところでした(笑)


どうも。……あれ、写真より背ぇ高くない?
ヒールです(笑)。仕事の服のまま来ちゃいました

店はカウンターだけの細長いワインの店。乾杯して最初の20分、イズミはずっと綺麗な標準語だった。「そうなんですね」「それは大変でしたね」って、相槌が接客のそれで、感じはいいんだけど、ちょっとよそいき。しかもこの標準語、よく聞くと綺麗すぎる。アクセントの位置を一個ずつ確認してから置いてるみたいな、作業の跡がある喋り方。俺が関東の人間だから合わせてくれてるのか、ただの癖なのか、この時点では分からなかった。

感じいいんだけど、距離がまだ接客なんだよな。イントネーションもほぼ東京だし。大阪の子じゃなかったっけ?
仕事の話を振ったら、心斎橋のセレクトショップで働いて6年目だと言う。
試着室から30分出てこないお客様とか、いますよ。たまに中で電話してます(笑)


何の電話。
彼氏さんに「どっちがいい?」って。私に聞いてほしい(笑)

ワインは二杯目からイズミに選んでもらった。裏のラベルを一瞬見ただけで「これは重すぎるからこっち」って戻す手つきが、明らかに慣れてる。

選ぶの早いね。詳しいの?
店長がワイン狂いで、勝手に覚えました。試飲会、月イチで連れて行かれるので(笑)

で、俺が例のホテルの話をした。荷物だけ預けて放り出されて、今夜の宿が「理論上はある」状態だってやつ。
なんですかそれ(笑)。……なんやそれ(笑)


ん。いま出たよね。
……出ました。よう笑うと、戻るんです


戻るほうで喋ってよ。そっちのほうが話してる感じするわ。
店でずっと標準語で接客してるんで、初対面やと勝手にこっちが出るんですよ。……ほな、遠慮なく(笑)

宣言どおり、そこからのイズミは相槌が「そうなんですね」から「ほんまに?」に変わった。それだけのことなのに、カウンターの温度が2度くらい上がった。

大阪の人って一家に一台たこ焼き器って言うけど、あれ実際どうなの。
うちはある。……あるな、普通に(笑)


あるんだ。
でも言うほど焼かへんよ。年2回くらい。プレート洗うの、誰もやりたないねん(笑)

生ハムを半分こして、二杯目のグラスが空く頃には、会話の球が勝手に転がるようになってた。接客の話が面白かったんだよな。東京の店と大阪の店で客が違うのか聞いたら、イズミが食い気味に頷いた。
ちゃう。大阪のお客さん、値段のこと普通に言うてくるもん。「これなんぼ?まけて」って(笑)


セレクトショップでまけてって言うんだ。強いな。
まけられへんのに(笑)。でもその一言があるだけで、なんか売り場があったかいんよ

逆にイズミからも聞かれた。東京から何しに来たん、って。仕事の用事が半分、残り半分は決めてない、って答えたら、「決めてないほうの半分に私が入ってるん、おもろいな(笑)」って笑われた。そう言われると、たしかに変な話なんだよな。夕方までは存在も知らなかった人と、いま生ハム半分こしてる。
途中、隣に座ってた常連らしいおっちゃんが「兄ちゃん、東京から?」って割り込んできた。俺が返事するより先に、イズミがすっと「お兄さん、いまええとこなんですよ」って笑顔で受けて、おっちゃんは「ほな邪魔せんとこ」って自分のグラスに戻っていった。鮮やかすぎて、ちょっと拍手しそうになった。

今の返し、完全にプロの動きだったな。守られたの、俺のほうだわ。
癖です(笑)。酔うたお客さんのいなし方だけ、この6年でめっちゃ上手なってん

店を出ても、どっちも解散を言い出さない
2時間ちょい飲んで、店を出た。8月の終わりの夜で、昼間の熱が歩道にまだ少し残ってる。どっちからともなく御堂筋のほうへ歩き出して、「じゃあ」がどっちからも出ない。この、出ない感じが答えみたいなもんで。
アキさん、明日は?


昼まで寝て、天王寺のほうを歩いてみようかなって。
渋いな(笑)。動物園の横から通天閣まで、普通に歩けるで

ちなみにこの「明日は天王寺」は口だけで終わらせず、翌日ほんとに歩いた。その記録は別の回に書いたんで、大阪の続きはそっちで。
心斎橋の交差点を渡ると、さっきまでの人混みが嘘みたいに減って、閉まったショーウィンドウの明かりだけが並ぶ。その一個の前で、イズミがふっと足を止めた。
このマネキンの組み方、うちの店長やったら怒るやつ(笑)


俺には何が悪いのか一個も分かんないけど、そういう目で街見てんだ。全部仕事場じゃん。
アキさんも、そういうのあるん?


……人の多い交差点で、つい一人で立ってる子を目で探しちゃうとこ、かな。
最悪や(笑)。今日は探さんでええのに

言われて、たしかにこの日は一回も交差点で目が泳いでなかったな、と思った。隣が埋まってる夜は、街の見え方がちょっと違う。
御堂筋に出たあたりで、ポケットの中でスマホが震えた。ホテルからで、「お部屋のご用意ができました」。

……部屋、入れるって。いま連絡きた。
今かい(笑)。よかったやん、宿なし解消で


9時って話はどこ行ったんだよ。まあいいけど。……ホテル、このすぐ先なんだわ。荷物も受け取りたいし、下のバーで一杯だけどう?しんどかったら駅まで送るわ。
……一杯だけな(笑)

誘うときは、断られたら「だよね」って駅まで送って終わるだけの温度で出す。イズミが半笑いで考えてる数秒、俺は信号の色を見てた。乗ってこないなら、御堂筋線の入口まで送って解散するつもりだった。
フロントでキャリーを受け取るとき、例のお姉さんがまだいて、俺の顔を覚えてたらしく、もう一回頭を下げられた。イズミが横で笑いをこらえてるのが、見なくても分かった。
ホテルの下のバーで、ほんとに一杯だけ飲んだ。細長いグラスを挟んで、店で聞いた話の続き。カウンターで肩が触れる距離になっても、イズミはもう直さなかったし、東京の言葉もほとんど出てこなかった。グラスは一杯きりなのに、どうでもいい話が一個も途切れない。たこ焼き器のプレートを誰が洗うかだけで五分は喋った。氷が溶けきっても、まだお互い次の一言を持ってた。そのあとのことは、例によって細かく書く趣味がない。ちゃんといい雰囲気のまま、大阪の夜が更けた、とだけ。
日付が変わる頃、御堂筋の歩道で
トゥナイトを押したのは、この歩道から一本入ったコーヒー屋の、窓際の席だった。
- マッチしてから会うまでが早い。日程調整も店の予約もアプリ側が段取りしてくれる
- 初回は公の飲食店で・本人確認必須の設計。ちゃんとしてる分、会う約束までが軽い
- 対応エリアは東京・大阪・福岡などの都市部(順次拡大中)。このへんで動くなら選択肢に入れていい
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イズミが「ほな、そろそろ帰るわ」と言うので、下まで送りに出る。日付が変わる少し前の御堂筋沿いの歩道、イチョウ並木が街灯で薄く光ってて、風が昼間よりやわらかい。
送りはここまででええよ。うち、ここから全然近いし


了解。気をつけて。
アキさん、さっきからシャツの裾ばっかり直してんで(笑)


夕方からずっとなんだわ、これ。着替えがキャリーの中だったから、シワ伸ばすくらいしかやることなくてさ。
今日さ……部屋、入られへんくてよかったんちゃう?(笑)ほな

イズミは何歩か行ったところで一回だけ振り返って、二、三歩ぶんだけ後ろ歩きで手を振る。その顔にはもう、最初のよそいきの標準語がどこにも残ってない。イズミはもう一回だけ笑って、前を向いて、夜の御堂筋をまっすぐ歩いていく。
遠征の夜を、もう一段深く読む。
旅行先や別エリアで空気を作る時に役立つ、街の入り方と夜の動線を集めました。


