Jメール 鹿児島天文館で白熊を割った27歳と、プロフ検索から始まった一泊遠征
土曜の朝6時台、羽田のラウンジでJメールを鹿児島で検索した。3ptで開いた写真は本人じゃなくて白熊。「一人で一個食べきれません」の一行に返した一通から、天文館で服を売る27歳のサキと白熊を縦に割って、山之口本通りの居酒屋まで行った一泊遠征の話。
天文館のアパレル販売員PLACE鹿児島
現場HOOK現場感を
そのまま読む
土曜の朝6時40分、羽田のラウンジでJメールを開いて、鹿児島で検索をかけてた。搭乗まであと1時間ない。隣の席のスーツの人は新聞を目いっぱい広げてて、俺はその横で、一回しか歩いたことのない街の女の子の自己紹介を、上から順に読んでた。
その日の夕方、天文館で会ったのは、服屋で働いてる27歳のサキ。かき氷の白熊を一個、スプーンで二つに割って食べて、山之口本通りの居酒屋で二軒目まで行った。白熊の割り方から鼻の行き先まで、決め事は全部向こうが後出しで決めていった一泊の話。
搭乗口の手前で、鹿児島のプロフを上から読んだ
鹿児島行きを決めたのは水曜の夜だった。土曜の朝に出て、日曜の昼に帰る一泊だけ。安い便が残ってたのを見て、深く考えずに取った。
前に天文館に一人で出た夜は、アーケードで最初に声をかけた子が配信中で、画面の背景にされてる。あの夜は街を歩いて、店で隣になった子と喋るやり方だった。だから今回は逆で、着く前に一人と約束を作ってから行くつもりでいた。
それなのに、Jメールを開いたのが出発当日のラウンジ。三、四日前から動かすって自分で書いといて、これ。水曜から三日間、存在ごと頭から抜けてた。ラウンジのソファに座って、搭乗券をしまおうとしてスマホを見て、やっと思い出した。笑
18歳未満(高校生含む)は入口で断られるサービスで、通るには年齢の分かる公的な書類が要る。俺はだいぶ前に通してあって、ラウンジで止まる理由は無かった。鹿児島で検索して、出てきた人のプロフを順番に開いていく。プロフの文章を読むのは基本タダで、プロフの写真を見るのは1枚3pt。
顔を出してない人が多かった。後ろ姿、夕方の海、焼き鳥の串、車のハンドル。地方で出会い系を開いたときの話にも書いたけど、人の少ない街ほど、プロフの写真が後ろ姿か食べ物になりがちなんだよ。こっちも後ろ姿の写真で登録してるんで、文句を言える立場じゃない。
結局、写真まで開いたのは2人だけだった。1人目の写真は海。プロフに「会えるのは平日の夜だけです」と書いてあって、文章の感じはよかったんだけど、俺が鹿児島にいるのは土曜の一晩だけ。そこで閉じた。
もう1人が、ニックネームが「さき」の27歳で、自己紹介はこれで全部だった。
天文館で服を売ってます。土日はだいたい店にいます。白熊は一人で一個食べきれません。
3pt払って写真を開いたら、真上から撮った白熊だった。練乳のかかった氷の山に、果物と豆で顔が作ってあるやつ。朝の6時台に6pt使って、人間は一人も見てない。

白熊の写真に3ptって、元取れたんすか

取れた。夕方に本物が出てくる。笑
一通目は、自己紹介の最後の一行だけ拾った。福岡で会えた子のときも、プロフにあった「屋台」の一語を拾って一通目にしてる。服の話も土日の話も、会ってからでいい。

はじめまして。今日から一泊だけ鹿児島に行きます。白熊、一人で食べきれないなら半分引き受けます。夕方からなら天文館に出られます
送信が6時58分。メールは1通7pt。返事を待ってる時間はなくて、搭乗口に向かって歩きながら機内モードにした。
着陸したら、質問が四つ届いていた
鹿児島に降りたのが9時40分。機内モードを切ったら、Jメールに一通入ってた。届いたのは8時12分。荷物が出てくるより先に、それを開いた。受信を開くぶんには1ptも減らない。
半分って、上の半分ですか?下の半分ですか?(笑)

東京のどこから来ると?

なんで鹿児島?

白熊は食べたことあります?

挨拶も前置きもなくて、質問だけがいきなり四つ並んでた。
ベルトの前で、ちょっと笑った。白熊の一行に乗っかっただけの一通に、ここまで食いついてくるとは思ってなかった。しかも一個目が「上の半分か下の半分か」。返事を考えるより先に、この子と喋ったら楽しいだろうな、が来た。
四つに一通ずつ返したら、メールが四通ぶん減っていく。こういうときだけ頭が回るんだよな。中央駅前のホテルに荷物を預けてから、一通の中で上から順に全部答えた。

上の半分で。果物が乗ってるほう。東京は山手線の外側です。鹿児島は安い便が残ってたからで、来るのは2回目。白熊はまだ食べたことないです
送ったのが11時すぎ。これで2通目。
12時35分に返事が来た。昼休みらしい。
上は取り合いになるとこです(笑)

山手線の外って、どれくらい外?

今日は18時まで店です。白熊、土曜の夕方は並ぶっど

質問がまた増えてる。ただ最後の一行で、会う気はあるんだと分かった。並ぶ前提で話してくれてるんだから。
当日に連絡がつかなくて困るのはお互いさまなんで、この3通目の最後に、LINEのIDも一行足しておいた。

電車で20分くらい外です。18時半に天文館でどうですか。並ぶのは平気です。当日の連絡用に、よければLINEも置いときます
次の返事は、15時10分に短く来た。
よかよ。場所はあとで写真で送ります。LINEは休憩終わる前に入れとく

地名じゃなくて写真で、っていうのが少し面白かった。天文館のどこそこって書いても、鹿児島2回目の東京の人間には通じないと思われたのかもしれない。たぶん正しい判断だわ。
LINEに追加されたのは15時半。Jメールで俺が送ったのは、一通目から数えて3通で21pt。その前に写真で6pt。向こうから届いたほうは、何通開いても減らない。
昼のあいだは中央駅のまわりにいた。9月の鹿児島、まだ普通に暑い。観覧車の下の広場を一周しただけでシャツが背中に張りついて、駅ビルの中に逃げ込んで黒豚のとんかつを食った。そのあとは冷房の効いた本屋で、鹿児島のガイドブックを立ち読みしてた。白熊のページは、ちゃんとあった。
15時すぎにホテルに入って、シャワーを浴びて、1時間だけ寝た。起きたら、LINEのいちばん上にサキの名前があった。中身はスタンプ一個。
最初の3ptは本人じゃなくて、白熊の写真に払った。Jメールのプロフ検索で、メールまで送ったのはこの一人だけだった。
- 西日本・九州エリアの会員が厚い印象。遠征先で重宝した
- 運営20年超の老舗で、サポートと年齢確認がしっかりしてる
- 登録無料+お試しポイントで、まず雰囲気を見られる
18歳未満(高校生を含む)はご利用いただけません。登録には年齢確認が必要です。本コンテンツには広告(PR)が含まれます。
送られてきた写真の中に、俺があとから入った
18時2分、LINEが一通。
上がった!

18時すぎの市電に中央駅から乗った。天文館通までは5、6分。降りた正面で、アーケードの入口が口を開けてる。
土曜の夕方の入口は、買い物袋を提げて出てくる人と、これから飲みに入っていく人で、流れが二本になってた。日は落ちかけてるのに、アスファルトからまだ昼の熱が上がってくる。後ろで市電が鐘を鳴らして出ていったところで、写真が一枚届いた。
この写真を撮ったとこにおります。探して(笑)

写ってたのは、アーケードの入口と、手前を横切る市電の線路。右の端に、電停の屋根が半分だけ切れて入ってる。写真の中に、サキはいない。撮ってる側にいるんだから当たり前なんだけど、一瞬それで探しかけた。
スマホを顔の前に掲げて、画面と景色を重ねてみた。電停の屋根が右に半分ってことは、撮った人は電停より左で、線路を挟んで入口の向かい側にいる。横断歩道を渡りながら、何回も振り返って、入口の見え方を画面と比べた。
渡りきったところに、スマホを構えてる人がいた。俺がさっきまで見てた写真と同じ角度で、同じ入口を撮ってる。俺はその画面の中を、ちょうど横切ったところだった。
あ、入った(笑)


今の、写っちゃいました?
写った。ど真ん中(笑)


あとで消しといてください
どうしよっかな

サキのプロフの写真は白熊だったから、顔を見たのはこれが最初。思ってたより背が高くて、思ってたよりよく笑う。
黒のノースリーブに、白の幅の広いパンツ。髪は後ろで一つにまとめてて、首のあたりが少し汗ばんでる。着てるのは自分の店の服だって、あとで聞いた。最初の質問は、挨拶より先に来た。
地図、開かんかったと?


開かなかった。写真で探すの初めてで、途中から意地になってた
えー、楽しかったやろ


楽しかった。横断歩道の途中で一回止まったけど
白熊の店は、入口のほうに渡り直して、屋根の下を少し歩いたところにあった。サキの言った通りで、土曜の夕方、店の外に列ができてる。前に8組。並んでるあいだも、聞かれる側はずっと俺だった。
家賃っていくら?


それは言わない。笑
じゃあ、鹿児島の何倍?


……2倍よりは上
わっぜ(笑) 満員電車は毎日乗ると?


朝は乗ってる。ドアに頬っぺたがつくやつ
芸能人は?見たことある?


2回くらい。どっちも名前が出てこなかった
意味なかやん(笑)


家賃、初対面で聞かれます?

聞かれた。言わなかったら、鹿児島の何倍かで詰められた。笑
並んだのは15分くらい。前の組が一つ店に入るたびに、サキの質問が一個ずつ進んだ。
白熊の顔を、サキがスプーンで縦に割った
席について、俺が「二つ頼みます?」って聞いたら、即答で止められた。
一個でよか。半分って書いてきたの、そっちやっど


書いた。たしかに書いたわ
運ばれてきた白熊は、写真で見たよりでかかった。器からはみ出しそうな氷の山に練乳がかかってて、その上に果物と豆で顔ができてる。真上から見ると、ちゃんと熊。3ptで見た写真の実物が、目の前にある。
サキはスプーンを一本、柄のほうを下にして持って、氷の山のてっぺんから手前まで、まっすぐ線を引いた。熊の顔のど真ん中を、縦に。朝は上か下かって聞いてきたくせに、縦。上は半分ずつ、ってことらしい。
こっちから右がアキさん。左が私。目は一個ずつ


鼻、ちょうど線の上に乗ってるけど
鼻はあとで決める


あとで決まるんだ。笑
食べ始めてから、線を引いた意味が分かった。俺は自分の側の下のほうから崩していったんだけど、白熊って要は氷の山だから、片側を削ると反対側がずり落ちてくる。俺がひと匙すくうたびに、サキの側の氷がこっちに傾く。
そっちの下から掘ったら、こっちが崩れてくるって(笑)


じゃあどこから食えばいいの
上から。てっぺんから順番


ルールがあるなら先に言ってよ。笑
食べてるあいだも、サキは聞くのをやめなかった。今度はかき氷の話。
東京のかき氷って、いくらすると?


高いとこだと千円を超えるかな
かき氷で?ふわふわのやつ?


ふわふわのやつ。夏になると、そういう店に行列ができてる
アキさんも並ぶと?


並んだのは人生で一回だけ
一回!?東京の人なのに?


住んでると、いつでも行けると思って行かないんだよ
その一回は、何味やったと?


いちごの上に、練乳がかかってるやつ
それ、ほぼ白熊やん(笑)

言われてみれば、そうじゃん。わざわざ並んで食った一杯と、いま食ってるこれの違いを説明しようとして、うまく言えなかった。
焦って大きめに一口いったら、こめかみに来た。

……きた。頭のここ
急いで食べっで(笑) 白熊は逃げんよ

鼻の行き先は、最後に決まった。俺の側の氷がなくなりかけたころ、サキが線の上に残ってた豆を、スプーンの先で自分の側に寄せた。
鼻は、私


あとで決めるって、そういう決め方?
目は一個あげたやん(笑)


鼻、最後に持ってかれてるじゃないすか

目を一個もらってるから、文句言えないんだよ。笑
店を出たのは19時半すぎ。プロフに書いてあった通り、一人じゃ食べきれない量だった。二人で、器がちょうど空いた。
二軒目は山之口本通りで、俺が選ばされた
通りに戻ったところで、サキが言った。
二軒目、アキさんが選んで


俺が?鹿児島2回目の人間だけど
だから。私が選んだら、いつもの店になるもん

自分の街の、入ったことのない店に入ってみたいらしい。前を通るだけで一回も入ってない店って、地元の人間ほど多いんだと思う。俺も家の近所にそういう店がいくつもある。
アーケードから、山之口本通りのほうに抜けた。飲み屋のある路地へ入っていく手前の表の道で、土曜の20時前は、店を探してる組が行ったり来たりしてる。俺が選んだのは、入口の横に黒板が出てる居酒屋。今日のおすすめの一番上に、チョークで「きびなご」と書いてあった。理由はそれだけ。
ここ、前は何十回も通っとるけど、入ったことない


じゃあ、ちょうどいいじゃん
中は奥に長くて、カウンターの向こうで煙が上がってた。俺らはテーブル席に通された。壁の時計の下に、地元の焼酎の一升瓶がずらっと並んでる。座ってすぐ、サキがスマホを出して、一枚の写真をこっちに向けた。
さっきLINEで送られてきたのと同じ構図で、違うのは、手前の横断歩道の真ん中に、スマホを顔の前に掲げた男が一人、半分ぶれて写ってるところ。
これ、さっきの


俺、こんな必死な顔して渡ってたんだ
画面しか見とらんもん(笑) 消そうか?


いや、いい。証拠として残しといて
サキが頼んだのは梅酒のソーダ割り。焼酎は匂いがだめで、ほとんど飲まないらしい。俺は生ビールのあとに、せっかくだから芋焼酎をロックで一杯だけ。グラスを向こうに寄せたら、サキは鼻を近づけて、すぐ戻してきた。
うん、お父さんの匂い(笑)


それは焼酎がかわいそう
つまみは、きびなごの刺身と、さつま揚げ。と俺が言ったら、すぐ直された。
こっちじゃ、つけあげって言うと


つけあげ。覚えた
東京でつけあげって言っても、通じんと?


たぶん通じない。揚げ物のなにか、って顔される
聞かれるのは、俺だけじゃなかった。きびなごはどこの港で揚がったのか、つけあげの中に何が入ってるのか、二階は座敷なのか。注文を取りに来た店の兄ちゃんは、最初は短く答えてたのに、三つ目あたりから伝票を持ったまま足を止めて、ちゃんと答えるようになってた。この子は、目の前に知らないものがあると、聞かずに素通りできないんだと思う。
それで今度は、俺のほうから仕事のことを聞いた。土曜は一日じゅう、畳んで、出して、また畳む日らしい。

土曜の服屋って、どんな人が来るの
高校生とお母さんと、県外の人。あと、試着だけして帰る人(笑)


試着だけの人、嫌じゃないの
嫌じゃなか。似合うって言うたら、半分は戻ってくるもん


半分も戻ってくるんだ
残りの半分は、天文館のよその店で買っとる(笑)


それ、笑って言えるのすごいな
そこから東京の服屋の話も聞かれた。表参道の店って店員さんは何人いるのか、通りに面した店と駅ビルの店で売れるものは違うのか。どれも答えられなかった。俺が東京で服を買うのは、だいたい駅ビルで、閉店の30分前。
東京におるとに、もったいなか


それ、白熊のときにも似たこと言われた
21時40分に店を出た。電停のほうへ歩きかけたら、サキが線路沿いの歩道を指さした。
歩こ。この時間の市電、ぎゅうぎゅうやっで


中央駅まで歩ける?
歩ける歩ける。線路について行けば着くもん(笑)

天文館の明かりは、少し歩くとすぐ途切れる。夜になってやっと風が出てきた歩道を、市電が二回、俺らを追い越していった。二回とも、中は本当にぎゅうぎゅうだった。サキは前を向いたまま、この日いちばん小さい声で聞いてきた。
アキさんのホテル、窓から何が見えると?


隣のビルの壁
……それ、見てみたか(笑)

壁を見たがる人を、俺は初めて見た。中央駅の手前の信号で、サキは自分の家のほうへは曲がらずに、俺と同じほうへ渡った。その先のことは、俺とサキの分だけにしておく。
東京に戻った次の土曜、「この店知っとる?」
日曜の昼の便で、東京に戻った。
サキを見つけたのは、Jメールのプロフ検索だった。あの白熊の写真がなかったら、たぶん最後の一行まで読まずに素通りしてた。
- 西日本・九州エリアの会員が厚い印象。遠征先で重宝した
- 運営20年超の老舗で、サポートと年齢確認がしっかりしてる
- 登録無料+お試しポイントで、まず雰囲気を見られる
18歳未満(高校生を含む)はご利用いただけません。登録には年齢確認が必要です。本コンテンツには広告(PR)が含まれます。
次の土曜の14時すぎ、LINEに店の名前だけが一行届いた。知らない名前で、写真も説明もついてない。店の名前の響きからして、服屋なんだろうなとは思った。
この店知っとる?


知らない。どこの?
東京。先輩が、東京行ったら絶対寄れって


東京って広いんだよ。笑
住所送る。アキさんちから近い?

土曜の午後なら、向こうは店に立ってる時間のはずだった。休憩の合間に送ってきたんだと思う。送られてきた住所を地図に入れたら、俺の最寄りから電車で20分。降りたことのない駅の、改札を出て3分のところだった。

電車で20分。降りたことない駅だった
なんで降りんと?

なんで、と聞かれて、白熊の店で言ったのと同じ答えを打ちかけた。住んでると、いつでも行けると思って行かない。打ちかけて、消した。
遠征の夜を、もう一段深く読む。
旅行先や別エリアで空気を作る時に役立つ、街の入り方と夜の動線を集めました。


